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2023年の論点

入居金6000万円は“掛け捨て”に…77歳、健康体で「高級老人ホーム」に入ってみた

入居金6000万円は“掛け捨て”に…77歳、健康体で「高級老人ホーム」に入ってみた

2023/01/07

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 社会

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 2021年、77歳にして高級と言われる老人ホーム(パークウェルステイト鴨川)に入居してみた。

 三井不動産が亀田メディカルセンターと組んで千葉の鴨川に運営する老人ホームだ。自立型老人ホームの入居者の資格は60歳以上、自立できて入居時には介護を必要としない人が条件だ。入居者の平均年齢は、おそらく80歳前後。そこに住み始めてもう1年になる。

平野悠さん(本人提供)

決断のきっかけはテレビドラマ「やすらぎの郷」

 経営が不動産会社ということで、運営にはやや素人と感じる面もあるが、やはりここのホームから見る空と海の景観の素晴らしさには代えがたい。

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 入居当時、私は家庭的に長年連れそった妻とも折り合いがあまり良くなかった。「自分は老後にこのカミさんのもとでアルツハイマーになってしまったり、更にはシモの世話まで厄介になるのか」と思うと、どうもやりきれない。結婚した子供たちも複数いるがアテにはならない。

 いっその事、自分の終末は家族や友人に頼らず介護のプロに任せたいと思った。

 決断のきっかけは2017年テレビ朝日で放映された倉本聰脚本のテレビドラマ「やすらぎの郷」だ。見ていて、海も山もあり、医療もしっかりしていてインテリジェンスのある老人たちと共に過ごし大好きな海に抱かれながら静かに死んで行きたいと痛切に思った。