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2023年の論点

「OECD諸国と比べて、日本は子ども関連の予算が半分」暴言→引退表明の明石市長がふりかえる“12年間の市政改革”

「OECD諸国と比べて、日本は子ども関連の予算が半分」暴言→引退表明の明石市長がふりかえる“12年間の市政改革”

泉房穂氏インタビュー #2

2022/12/29

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 社会, 企業, 働き方

note

 明石市議に暴言を吐いた問題で、2023年春の任期満了をもって政治家を引退すると表明した兵庫県明石市の泉房穂市長(59)。

 暴言問題はこれで2度目だが、所得制限なしの子育て支援策に力を入れ、人口と税収を年々増やしてきた手腕への評価は高い。最初の暴言で辞職した後の出直し選挙で7割の得票率で再選したように、市民からの支持もある。

 3期12年に及ぶ市政について振り返り、全国的にも注目を集めている政策の数々や、今後の活動について語ってもらった。(全2回の2回目/最初から読む)

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明石市の政策はグローバルスタンダード

 地方自治体と国の役割には、それぞれ分担があります。地方の首長が政策立案する時に一番重要なのは、市民のリアルです。この時代、答えは国の官僚が持っているのではなく、まちの中にあります。コロナ禍の前は、立ち飲み屋に行ったり、駅前に出たり、スーパーに行ったりして、昼はまちに出ていました。市民のみなさんが声をかけてくれるから、リアルな声が聴ける。答えは市民の顔に書いてあります。それが私の政策の根拠です。市長への意見箱にはすべて目を通すだけでなく、すべてに対応しています。

©文藝春秋

 コロナ禍の初期、2020年の4月には、商店街のオヤジさんがテナント料を払えないと言うから、4月中に100万円を振り込むことにしました。話を聞いてすぐ、職員の態勢を作って、銀行に掛け合い、臨時市議会を立ち上げて、補正予算を組みました。それで百何十件のテナントに給付金を振り込めました。また、そのオヤジさんに、「うちのパートさんは1人で子どもを養っているけど、パート代払えてないから、あの家も食べていかれへん。助けてあげて」と言われて、すぐにひとり親家庭に5万円を振り込みました。この明石市の給付を参考にして、国はその後、現金給付の政策を行ったんです。

 政策に関しては、地球儀を見るように世界のあちこちを見て、参考にしています。明石市の政策はほとんど海外からの直輸入です。養育費の立て替え政策は、フランスやスウェーデンに学び、一番参考にしたのは韓国です。生理用品の無償配布は、ニュージーランドを参考にしています。今度、審議会の10人に1人を障害者にする条例を出す予定です。これは最先端のルワンダの憲法を参考にしています。