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2023年の論点

「OECD諸国と比べて、日本は子ども関連の予算が半分」暴言→引退表明の明石市長がふりかえる“12年間の市政改革”

「OECD諸国と比べて、日本は子ども関連の予算が半分」暴言→引退表明の明石市長がふりかえる“12年間の市政改革”

泉房穂氏インタビュー #2

2022/12/29

source : ノンフィクション出版

genre : ライフ, 社会, 企業, 働き方

子ども予算を倍増、土木費は3割減に

 ポイントは2つ。グローバルスタンダードの政策を明石でもやるということと、世界の最先端、今最もホットなニーズを見ること。OECD諸国の平均的な予算配分と比べると、日本は子ども関連の予算が半分で、土木費が倍近くです。なので、明石市の予算配分は、子ども予算を倍増、土木費は3割減にしました。明石は地球の一部だから、地球のスタンダードをする。そうすれば、まずコケません。なぜなら世界最先端の政策ということは、時代の切実なニーズだから。やって当然の施策ばかりです。よく誤解されるけど、チャレンジングなことは全然していません。石橋を叩いて叩いて、大丈夫かなと置きにいっているくらいの施策が、「全国初」と言われる。日本では全国初でも、世界ではもうラストランナーです。

 しかし、地方自治体だと、やりやすいこと、やりにくいことはある。市長としてもどかしいのは3つです。警察の権限がないから、消費者被害救済ができない。教育の権限がないから、教育改革ができない。医療の権限がないから、コロナ対策も苦労しました。ただ、権限がなければ、逆に権限を使わなくてもやれることをやるしかない。コロナの時は、医師会や市民病院に予算をつけるかたちで誘導策を立てました。権限はなくてもやらなあかんことをするのが市長です。

 また、まちづくりに関しては、市民を全面的に信頼してお金を渡すことが重要です。明石ではこども食堂を全28の小学校区に作ると決めて、今、47カ所のこども食堂が一つもつぶれずにやっています。地域のボランティアに、年間130万円を上限に金を渡しきりです。不正があったら市長が責任を取るからかまへん、と。責任は市が取る、金も出す、場所も確保する、広報もする、保険も入る。ボランティアの皆さんに必要なのは気持ちだけです。気持ちだけで子どもに食事を作ったり、学習支援してあげてくださいということです。

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※写真はイメージです ©文藝春秋

 最初に市長のしたいことを理解してくれるのは市民です。市民が理解してくれると、その票をもらっている市会議員が変わる。すると、議員からいじめられなくなるから職員が安心して変われる。実は市長の身近にいる職員が変わるのが一番遅い。それはそういうものですから、若いやる気のある首長には、しんどくても頑張ってほしいですね。