近年、増加傾向が続く私立小学校の入学希望者。幼児教室「わかぎり21」が都内60校を対象にした調査によると、2021年入学の年代では、前年比で応募者が1割近く増えていることが明らかになった。

 かつては揶揄まじりに「お受験」と呼ばれることも多かった小学校受験だが、なぜこれほどまでに入学希望者が増えているのか。そして、いったいどのような親が子を受験させているのか。ここでは、日本大学文理学部教育学科教授の望月由起氏の著書『小学校受験~現代日本の「教育する家族」』(光文社新書)の一部を抜粋。小学校受験を取り巻く状況を概括する。(全2回の1回目/後編を読む)

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 まず本節では、誰が小学校を「受験する」のかについて、「家庭の世帯年収」「親の年齢」「親の就労状況・職種」「親の学歴」「親の受験経験」などの観点から考えてみたい。

家庭の世帯年収

 小学校受験、特に私立小学校を受験するためには、進学後の学費面を含めて、経済的な問題をクリアする必要があることはいうまでもない。そこでまずは、経済的な余裕さの大きな指標となる「家庭の世帯年収」について、みていくことにする。

 図3-1は、調査対象とした家庭(以降、「小学校受験家庭」と表記する)の世帯年収について示したものである。

図3-1 家庭の世帯年収

 社会にはさまざまな職業があるが、一般的には、仕事の遂行に困難が伴い、かつ、高い技能を必要とする職業ほど、高い賃金・所得を得る可能性が高いといわれている。

 経済学者の橘木俊詔・松浦司は、総務省「家計調査年報」のデータを分析し、子どもを私立小中学校に通わせる比率は年収1000万円以上の層が際立って高く、2000年以降、所得階層と私立に子どもを通わせる比率に正の相関が存在し、近年その傾向が顕著になっていることを指摘している(『学歴格差の経済学』勁草書房)。

 図3-1からは、小学校受験家庭の半数以上(全体の54.1%)が世帯年収1000万円を超えており、1500万以上の家庭も4分の1程度(同24.7%)いることから、この年代の子どもをもつ家庭としては、極めて高い世帯年収の家庭が多いといえるだろう。家庭によっては、親の収入の他に、祖父母からの経済的支援などがある可能性も否めない。