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元妻の父親を撲殺したのち「遺体を食べた」と供述…犯人が法廷で語った“身勝手すぎる動機”とは――平成事件史

元義父殺害事件 #1

2023/01/02

genre : ニュース, 社会

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「お前は今日、死ぬ日って決まってたんだ」と罵声を浴びせ…

 浄化槽点検管理業を営んでいたTさんは、石崎の元妻の父親で、勤め先の社長でもあった。2011年6月14日の深夜1時ごろ、石崎は「いらなくなったプリンターをあげる」と、所沢市の自宅アパート玄関先でTさんにプリンターを手渡すと、これを両手で持ち玄関を出ようと後ろを向いた状態のTさんに対し、後ろから後頭部をいきなりハンマーで殴りつけた。呻きながら振り向こうとしたTさんの右こめかみをさらに力いっぱい殴りつけ殺害した。

「Tさんは崩れるように倒れ、玄関のゴミ箱にもたれるように尻餅をついて上を向いていた。私は、荒い息をしていたTさんのそばに立ち、Tさんを見下ろしていた。苦しんでいるTさんに『お前は今日、死ぬ日って決まってたんだ』と罵声を浴びせた……」(石崎の調書より)

 その直後、夜中3時過ぎにTさんの携帯電話を確認し、生存を装うメールを知人に送信。さらに自分の携帯電話にもTさんから電話がかかってきたように偽装した。のち、明け方からその日の夜まで、Tさんの遺体を解体する。

 遺体を浴槽に運び込んだ石崎は、あらかじめ準備しておいたチェーンソーやノコギリを用いてTさんの遺体を解体し、翌日、クワやショベルを購入。さらにその翌日、遺体を車に乗せ、長野県にある石崎の実家の庭にある花壇に胴体部分を埋めてから、その上に紫陽花を植えた。バラバラにした遺体の一部は、車を走行させながら山林や浄化槽などに遺棄したという。

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Tさんの遺体の一部が発見された長野県の民家 ©共同通信

 事件後、Tさんが自宅に戻らず出勤もしなくなったことを不審に思った周囲に対し、石崎は「Tさんは金に困り失踪した」と嘘をつく。Tさんの妻には「Tさんから電話があった」などと伝え生存を装った。その間、解体に使用したチェーンソーやノコギリを処分した。

Tさん殺害後も続く「いやがらせ行為」

 偽装工作により、約1年もTさん殺害は表面化していなかったが、これが石崎による殺人事件であると発覚したのは、彼が自ら犯行を明かしたことによる。先述の通り、石崎は事件の前から、そして後も、周囲に嫌がらせ行為を繰り返していたことが先に事件化し、取調べを受けていた。

 まず石崎はTさん殺害前、Tさんの会社をともに切り盛りしていたTさんの兄、Tさんの妻に恨みを募らせ、その兄の車のタイヤをパンクさせ、給油口から異物を混入したのち、Tさん妻の自宅敷地内にあったプロパンガスの高圧ホースを破損させた。Tさん殺害後も不満は消えず、Tさんの兄の車のナンバープレートを取り外す。

 さらにTさんの妻は、Tさん不在後の会社を、別の従業員とともに続けていこうという意志を見せていたが、その従業員が会社を突然辞めてしまった。またもやこれに不満を抱いた石崎は、従業員の自宅に赴き、玄関ガラス戸にスプレーで「金返せ」「殺」などと吹きつけた。

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