日本は、人類史上かつてない高齢化に見舞われている。2022年時点で、日本に暮らしている人々の平均年齢は47.7歳(中央値48.7歳)だ。これから日本の人口は急速に減っていくが、特に80歳以上の高齢者を中心として、高齢者の数だけは2040年ごろまでは増え続ける。

 これは社会的なパラダイムシフトであり、古い社会モデルの終わりを意味している。例えば、給与が高くなったベテランを定年退職させ、そこで得られる給与原資によって安価な新卒を複数人雇用するというモデルは、もはや成立しない。新卒が雇いにくくなるため、従業員の高齢化も避けられない。

 そうした中で、2025年、介護問題が爆発しようとしている。人口ボリュームの大きな団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる。生物の限界として、年齢が上がれば、多くの人が介護を必要とするようになる。介護を必要とする人の割合(要介護出現率)は、70~74歳では5.8%に過ぎないが、75~79歳では12.7%、80~84歳では26.4%、85歳以上では59.8%にもなる。

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 高齢者の数だけが増え続け、若手の数が減り続けるような社会においては、高齢者福祉も先細りになっていく。特に、日本のように、現役世代が高齢世代に仕送りをするような形(賦課方式)で社会保障を成立させてきた国においては、今後の高齢化福祉の減退は避けられない。それなのに、2080年ごろまでは世界人口は増え続けるため、食料をはじめとした限られた資源の価格は確実に上がっていく。

 

アクティブシニアという言論の陰で

 メディアでは「最近の高齢者は元気だ」といった論調が一般化しているが、楽観的にすぎる。確かに健康寿命は延びているので、最近の高齢者は元気である。ただ、同時に平均寿命も延びているため、平均寿命と健康寿命の差、すなわち介護を必要とする期間(男性約9年、女性約12年)には、ほとんど変化がない。理想とされるピンピンコロリ(急死)を実現できるのは、わずか5%程度である。