「私を犯罪者呼ばわりするのか!」
万引きGメンの仕事は過酷だ。1つ間違えれば、クライアントである店舗の信頼を失い、最悪の場合は訴訟リスクに発展する可能性もある。そうした事態を避けるためにも、Gメンが「絶対にやってはいけない」こととはいったい?
防犯対策のプロフェッショナルである日南休実氏が、「万引きGメン」や「万引き犯」の実態を綴った新刊『万引きGメンの憂鬱』より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
◆◆◆
万引きGメンは“目を切られて”はいけない
スーパーなどの店の中で商品をこっそり盗んでいく犯罪者たちを取締まるのが万引きGメンの仕事ですが、だからといって「怪しい!」と思った人にドンドン声を掛けていいのかというと、それは違います。
万引きGメンがもっともやってはいけないこと、それは「誤認」確保です。盗んだと思って声を掛けたけど盗んでいなかった。人違いだった。日常生活の場であれば「すみません」と謝れば済む話かもしれません。
しかしこの場合はそうはいきません。犯人と間違えられた人が「私を犯罪者呼ばわりするのか!」と腹を立てれば、名誉棄損や人権侵害、損害賠償に発展する可能性があります。万引きGメンのミスは個人の問題を離れて、あなたが所属する警備会社の不手際になり、「あの店は客を犯罪者扱いする店だ」という噂が立てばクライアントに迷惑をかけることになってしまいます。
言うまでもなく、客商売をする者にとって、お客様にこうした不信感を持たれてしまうことは命取りになりかねません。誤認での確保は周囲に与える損害があまりにも大きいのです。
ですからGメンに間違いは許されません。99%この人は万引きしている、商品を盗んだはずだと確信していても、1%でもそうでない可能性があるならば絶対に声を掛けてはいけません。声を掛ける時は100%、いや150%盗んだという確証があって、なおかつそれを証明できる状況になければ行動に移してはいけません。
そんなGメンにとって重要となるのが“目を切られない”ことです。