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ーー手術後に目を覚ました時、さすがにパッと確認はできませんよね。

桑野 手術はロボットを操作するようなダヴィンチ手術で、15時間かかったんだよ。で、背中の硬膜外腔に針を通して麻酔をした状態で集中治療室に運ばれて、遠くでなんか言ってるのが聞こえるのよ。あぁ、俺を起こそうとしてくれてるんだなって、なんとなくわかるの。看護師さんが「今日は何日ですか?」と聞かれて答えたと思うけど、とにかく人工肛門の位置を確認しないとさ。

「人工肛門はどっちについてますか?」「右です」「右かーーーーー!」って。

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ーー人工肛門が右についていれば外せる、左についてれば外せないと。さすがに手術が終わってすぐに人工肛門がついているのを目にすることはできないですよね。

桑野 体が動かないし、溜まった血や尿を出すドレーン(管)が体にいっぱい入ってたからね。ただ、なんとなくついてるなとは感じましたけどね。

©三宅史郎/文藝春秋

 看護師さんが溜まった血なんかと一緒に人工肛門のも出してくれるんだけど、点滴だけでまともに食べてないから便の形にもなってない黒っぽい液体だったので、あんまり実感がなかったよね。

人工肛門について話すのは「まったく恥ずかしくない」

ーー人工肛門の講習があった?

桑野 手術が終わって1週間くらいしてから、人工肛門の講習を受けるんですよ。その頃には自分でもなんとか動けるし、点滴が終わって食事もだんだんと普通になるから人工肛門のパウチ(袋)に溜まる便が液体じゃなくなるので、パウチの着け外しとか排泄物の処理の仕方とかを覚えないといけない。

©三宅史郎/文藝春秋

ーーパウチの価格はどれくらいするのでしょう。

桑野 1枚1,000円くらいで、3日間くらい使える。3時間に1回は液体状の排泄物が溜まるから、自分でギューッとやって袋から出すの。パウチ以外にもパッキンみたいなやつとか、匂いを消したり、袋から排泄物を出しやすくする、消臭と潤滑を兼ねたオイルとかも買う。

 俺は人工肛門に関しては優等生でね。一度も漏らしたことない。