推計で50人に及ぶ女性を拷問、強姦、そして殺害……1990年に逮捕されたトラックドライバーのロバート・ベンジャミン・ローズ。いったい何が彼を犯行に駆り立てたのか?
犯罪大国アメリカで実際に起きた凶悪殺人事件の真相に迫る、同名の犯罪ドキュメンタリー番組を書籍化した『トゥルー・クライム アメリカ殺人鬼ファイル』(平山夢明監修)より一部抜粋してお届けする。(全3回の3回目/#1、#2を読む)
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「お前の娘をイメチェンしてやった」
1990年2月3日。テキサス州パサデナで暮らす14歳の少女、レジーナ・ケイ・ウォルターズが行方不明になった。
もともとあまり素行の良くなかった彼女だけに、最初のうちこそボーイフレンドのところにいるのだろうと、さほど気に留めなかった両親。しかし、2日、3日と時間が経つうちに、これはさすがに只事ではないと不安に駆られ始め、警察に相談することにした。
それでも、居場所はわからない。レジーナの友人の一人が、「レジーナは恋人のリッキーと、ヒッチハイクしながらメキシコへ行く計画をたてていた」と証言したことから、警察も計画的な家出ではないかと考えていた。
しかし、失踪から1ケ月以上が経った3月16日。レジーナの自宅に聞き覚えのない男の声で電話がかかってきた。父親が電話を取ると――。
「お前の娘をイメチェンしてやった。髪が長かったから、ショートカットにしておいたよ」
中年らしき男の不気味な言葉。父親が「娘は無事なのか?」と叫ぶように問いかけると、電話は切れてしまった。
後に明らかになる、この薄気味の悪い電話の主の名は、トラックドライバーのロバート・ベンジャミン・ローズ。悪の所業の数々を大量の積荷の陰に隠し、全米を駆け回ったトラックキラーである。
ロバート・ベンジャミン・ローズは1945年、アイオワ州で生まれている。
ただし、父親が陸軍所属の軍人であったことを除けば、その少年時代を特徴づけるものは何もない。
学校ではサッカーやレスリングに勤いそしみ、聖歌隊に所属したほか、高校時代に改造車を乗り回したり、路上で大喧嘩をして警察に補導されたりしたこともあったが、それも活発な青春時代にはありがちなエピソードだろう。
そんなありふれた青年の人生が一変するのは、高校卒業後、彼が海兵隊に入隊してからのことだった。
あろうことか、父親が12歳の少女への痴漢容疑で逮捕され、裁判を待つ間に、その父が自殺してしまうのだ。