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「息子の嫁に恋するなんて問題だ。しかし…」義父の奇行と暴力夫に悩む彼女はどこへ…? 関係者すべてがこの世から消えた「スーザン・パウエル失踪事件」の気味悪さ

『トゥルークライム アメリカ殺人鬼ファイル』 #2

 敬虔なモルモン教徒の28歳女性はどこへ消えたのか? 彼女と関係の深い夫、子供、義理の家族などがすべてこの世から消え、迷宮入りとなった「スーザン・パウエル失踪事件」。

 犯罪大国アメリカで実際に起きた凶悪殺人事件の真相に迫る、同名の犯罪ドキュメンタリー番組を書籍化した『トゥルー・クライム アメリカ殺人鬼ファイル』(平山夢明監修)より一部抜粋してお届けする。(全3回の2回目/#1#3を読む)

容疑者は子供を道連れにして自殺…「スーザン・パウエル失踪事件」とは何だったのか? 写真はイメージです ©getty

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モルモン教会で出会った2人

 2009年12月。28歳の女性、スーザン・パウエルがユタ州ウエストバレーシティの自宅から忽然と姿を消した。

 スーザンの夫であるジョッシュ・パウエルやスーザンの家族は、あらゆる手を尽くして彼女の行方を捜したが、手がかりすら見つけることはできなかった。

 これが、パウエル家を襲う深い闇への入口だった――。

 ジョッシュはモルモン教を信仰する両親の家に長男として、1976年に生を受けている。3人の男の子と2人の女の子、計5人の子宝に恵まれたパウエル一家だったが、両親はジョッシュが 歳の時に離婚してしまった。

 ジョッシュの父スティーブンは、敬虔なモルモン教徒であったが、モルモン教が戒律で禁じているポルノの所有や、マスターベーションについては理解を示し、むしろ息子たちとポルノを共有していたという。

 成長過程においての自然な性への目覚めを寛容に受け止めていた父であったが、一方で、ジョッシュを口汚く罵るなどして、トラウマを植え付けたとも言われている。

 そんな家庭環境の影響なのか、ジョッシュは少年時代、姉妹が飼っていたネズミを殺してしまったり、口うるさい母親を包丁で脅したり、さらには自殺を試みるなど、情緒不安な一面を覗かせている。

 それでも学業は優秀で、ジョッシュは名門ワシントン大学に入学。

 最初の恋は22歳の時だった。モルモン教会で出会った19歳の女性との交際が始まり、幸せな青春時代の幕開けかに思われたが、彼の独占欲の強さが仇となり、この恋は短命に終わっている。

 その2年後、今度はモルモン教の研究所が主催するパーティで、5歳年下のスーザンと出会い、交際がスタート。おそらくはモルモン教の教えに従って、婚前交渉を控えていたであろう若き2人は、交際から半年で結婚を決めた。

 しかしこれが、悲劇の始まりとなった。

常軌を逸する父親の“想い”

 夫婦となったジョッシュとスーザンは、新居を探すまでの間、ジョッシュの父が住む家に間借りしていた。

 同居を始めた当初こそ、気のないそぶりを見せていた父スティーブンだったが、義理の父親に気に入られようと甲斐甲斐しく世話を焼く新妻スーザンに対し、そのうちただならぬ感情を抱くようになる。

 スティーブンは、当時の日記にこう記している。

「息子の嫁に恋するなんて問題だ。しかし……好きすぎて、彼女を手に入れるために無鉄砲なことをしてしまいそうだ」