事件性は特定されたが……
家宅捜索の結果、ソファ近くの床からスーザンの血痕が検出。さらに、スーザンにかけられていた150万ドル(当時のレートで約1億3000万円)の生命保険証書や、彼女が「身に迫る危機」を訴える手紙も見つかった。
もはやジョッシュがスーザンの失踪に何らかの関わりを持っていることは疑いようがなく、重要参考人と認定された。
しかし、事件発生から1年。スーザンの捜索に6850時間と1500万円が投じられながら、警察はジョッシュを逮捕するだけの証拠を得られずにいた。
不可解なこの事態はメディアをにぎわせ、世間の目はジョッシュに注がれた。
「絶対にこの男がやったに違いない」
「保険金目当ての殺人だ」
「おそらくこういう手口ではないか」
そんな様々な憶測が飛び交う中、ジョッシュの父であるスティーブンは驚きの発表を行なった。
「義理の娘スーザンは、頻繁に私に言い寄ってくるほど性に奔放な女でした。スーザンと同じ時期に行方不明になっている男性とも連絡を取り合っていて、おそらくは今頃、その男性と別の国へ駆け落ちして、新しい人生を送っているに違いありません」
娘の人格を貶めるこの発言に、激怒したのはスーザンの父親だった。
具体的には、「可愛い孫たちを醜悪なパウエル家に任せておけない!」と、2人の孫を引き取るべく、ジョッシュと親権を争う訴訟を起こしたのだ。
それは、娘の死を確信した父親が、その遺志に報いようとする行動でもあった。
裁判所はやがて、2人の孫の親権をスーザンの父に移す裁定を下す。ジョッシュには週2回、監視付きで子供たちと会うことが許された。
母方の祖父母との新生活で安心感を得られたのだろう。子供たちは、徐々に母スーザンの失踪当日の様子を仄めかすようになった。
兄チャーリーの小学校の教師は、彼の発言が「そのうち、事件の真相を語るようになるのではないか」と思うほど、理論的で大人びたものだったと語っている。
また、まだ幼い弟のブレイデンだったが、彼はある「お絵描き」をして見せている。
キャンプに向かう家族4人の様子を描いたのだ。車内に座っているのは、パパと息子たちの3人だけ。これについて聞かれると、ブレイデンはこう答えたという。
「ママはトランクの中にいるの」