一晩のうちに、家族9人中5人を殺害……逮捕された長男(当時18歳)と次男(当時16歳)が明かした「あまりに恐ろしい殺人計画」とはいったい?
犯罪大国アメリカで実際に起きた凶悪殺人事件の真相に迫る、同名の犯罪ドキュメンタリー番組を書籍化した『トゥルー・クライム アメリカ殺人鬼ファイル』(平山夢明監修)より一部抜粋してお届けする。(全3回の1回目/#2、#3を読む)
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閑静な住宅で発生した夜更けの惨劇
「2人の兄に家族が襲われています……、いますぐ助けに来て!!」
オクラホマ州ブロークン・アローから、そんな一本の緊急通報が入ったのは、2015年7月22日、午後11時30分のことだった。
通報者はダニエルという12歳の少年。パトカーはすぐにブロークン・アローのベバー家に急行した。
車を降りた警官たちの目にまず飛び込んできたのは、玄関前のポーチに見られる血痕だった。即座にこれがいたずら電話の類でないことを彼らは察した。
周囲は住宅街で、ひっそりと静まり返っている。警官は、ピストルに手をかけながら、恐る恐るドアをノックした。
すると、家の中からかすかに助けを求めるような声が聞こえてきた。警官が慌ててドアを開けて飛び込むと、1人の少女が大量の血を流しながら、床に突っ伏しているのが見えた。13歳のクリスタルだ。
「おい、大丈夫か! いったい何が起きているんだ!」
警官が彼女にそう尋ねると、クリスタルは力を振り絞るようにして、こう答えた。
「兄たちが……家族を……」
どうやら、家庭内の凶行らしい。警官は邸内を見回した。そこかしこにペンキを撒き散らしたかのような血痕が確認できる。しかし、そんな惨状とは対照的に、物音はひとつも聞こえてこない。
警官は引き続きピストルから手を離さず、慎重に周囲を検めはじめた。
ふと、室内から家の外まで、血痕混じりの足跡がつづいているのが見えた。すぐに外の警官に連絡を入れ、警察犬を投入させる。
犬たちもこれがただならぬ状況だと感じているのか、時折、興奮気味に「バウ……バウワウ!」と吠え立てながら、足跡をたどっていく。
警察犬の向かう先は、ベバー家の裏庭のすぐ近く、小さな林の茂みだった。そこにうずくまるようにして身を隠していたのは、18歳のロバートと16歳のマイケル、ベバー家の2人の息子たちだった。
返り血と泥にまみれた2人の姿を見て、警官は迷わず身柄を拘束。しかし、内心ではにわかに信じられない思いであった。茂みの中に身を隠すような幼稚な2人が、これほど凄惨な事件を巻き起こすことなどあり得るのだろうか?
一体この家で何があったのか。そして彼らの目的は何なのか。
すべては法廷で明らかにされることとなる――。