実行されなかった“その後”のプラン
これが、ブロークン・アロー史上最も凶悪な犯罪と言われる、「ベバー家殺害事件」のあらましである。
ロバートとマイケルにとって誤算だったのは、最初に襲いかかったクリスタルが、奇跡的に一命をとりとめていたことだろう。
警官に保護されると彼女は、「長男と次男が犯人である」と伝えた。やがて警察犬が投入されると、2人は雑木林に隠れているところをあっけなく発見されることになる。
長男と次男によって殺害されたのは、計5人。生き残ったのは長女クリスタルと、2歳の三女オウタムだけだった。
ちなみに、幼いオウタムが無傷でいられたのは、決して温情などではなく、単にほかの家族の殺害に時間がかかりすぎ、彼女にまで手が回らなかったというのが真相である。
なお、拘置所へと送致された2人は取り調べに対し、この夜、実行できなかったプランについても明かしている。
「家族を皆殺しにした後は、全員の死体をバラバラにして、屋根裏に隠すつもりでした。その後は親の車を使って、通りすがりの街で最低50人、できれば100人くらい殺すつもりでした」
ブロークン・アローを震撼させた2人の言葉。しかし、裁判において弁護人は、2人の無罪を主張した。
長年にわたって親から虐待を受け続け、家の中という狭い世界に閉じ込められていたことによる精神的、肉体的苦痛こそが諸悪の根源であり、「2人は刑務所ではなくリハビリ施設に通わせるべき」というのがその言い分だった。
しかし、結果として裁判所は2人に「終身刑」という有罪判決を下している。
5人の犠牲を生んだベバー家の物件。事件後、市議会は惨劇の現場となった空き家を取り壊そうと資金集めを始めていたが、2017年3月、何者かの放火によって家は全焼してしまった。
現在、ベバー家の跡地は、犠牲者と捜査関係者へ祈りを捧げるメモリアルパークになっている。
犯罪ドキュメンタリー・トーク番組「トゥルークライム アメリカ殺人鬼ファイル」
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