「キレてる!……キレてるよぉ!!」
「ナイスバルク!!」
丸太のような腕がしなるたび、褐色の背中に幾条もの筋が浮かぶたび、真っ白い歯がきらめくたび、野太く、時に甲高い黄色い声援は、あまり聞きなれないボキャブラリーに乗って、ホテルのバンケットルームに飛び交うのだった。
異様な熱気に包まれたイベントの正体は、全国の自衛隊員らが肉体美を競い合うボディコンテスト「自衛隊プレミアムボディ2022」。今月10日、千葉・ホテルスプリングス幕張で開催された。今年からOB部門とレディース部門が新設されてイベントの規模は拡大。全国から133人の筋肉自慢の自衛官らが集まった。
全国の自衛隊員らが肉体美を競い合う
日頃から厳しい訓練に励む隊員たちのモチベーションにつなげようと、2017年に始まったこのコンテスト。コロナ禍の影響もあり、目の前の観客に筋肉をアピールするのは3年ぶりとなった。陸、海、空の各部門と、40歳以上を対象にした「マスターズ」、定年退官した「OB」、女性自衛官による「レディース」の6部門で、国防を担う精鋭たちが大いにしのぎを削った。
全身の筋肉総量を競う「ボディビル」ではなく、上半身の筋肉バランスが評価対象となる「フィジーク」で、選考基準は(1)健康美(2)引き締まった身体付き、バランスの取れたスタイル(3)ポージング(4)ウォーキングを含む身のこなし、見せ方(5)知性、品格、誠実さ。男性がサーフパンツ、女性は上下セパレートタイプのウェアにヒールという衣装規定のもと、審査員と一般観客による投票で順位が決まる。
開会を1時間前に控えた正午ごろ、会場の地下ホールは既に入場待ちの観客で人だかりが出来ていた。東京都の会社員女性(31)は「鍛え抜かれた筋肉を生で見ると興奮しますよね。待ちきれません」と妙に鼻息が荒い。会場入り口ではTシャツやステッカーなどのグッズ販売もあり、買い求める客で賑わっていた。
一方、出場を控えた選手は舞台裏でパンプアップに励む。足で押さえたゴムチューブを引っ張ったり、逆立ちになって腕立てしたりするたびに「っふっふ」「あぁ」と、艶めかしい(?)うめき声が薄暗い通路にこだまする。観客と審査員を惹きつける美しいボディラインを浮き上がらせるため、出番直前まで筋肉を追い込むという。