本当に健全な現場…小栗さんと小池さんが心を砕いて
宮澤 一方、義時さんと政子さんは、中心人物でありながら、芝居をひたすら受ける立場です。多くの人の死で血まみれになり、後始末をしながら変わっていく弟。そして変わりたくない姉。二人の葛藤を、小栗さんも栄子さんもとても悩みながら演じていらした。
新納 1年5カ月にわたる撮影の中、小栗さんと小池さんは、みんなが仕事をしやすいように心を砕いて、撮影は本当に健全な現場でした。大泉(洋)さんも含めて、本当に家族のようにまぶしくて、ともするとバラエティー番組を見ているように笑ってしまって。人として尊敬できる俳優さんでした。
宮澤 政子を演じる小池栄子さんは、母親として、女性として、悩みぬいたのだと思います。身内に身内を殺されても赦すことができる、頑ななまでの素朴さも感じました。物語の中心で耐える二人がいたことで、周りにいる人の個性が際立ちました。政子が将軍になった46回は、実衣なんてもう……。
溜まったしこりを出す場面をどう演じるか、とても迷いましたが、歴史に名を残していない人の波乱万丈な人生が伝われば嬉しいです。
最終回は「北条義時の一生」に思いを巡らせて
新納 天から全成の「人を恨んではいけないよ」の声が聞こえそう……。二人の我慢が最後にどう報われるのか、僕も最終回の内容は知らないので、本当に楽しみです。
宮澤 『鎌倉殿』は歴史の教科書を映像化したような作品ではないんです。「北条」という伊豆の豪族の一家族が、どう生きて、どう悲しみ、どう喜び、どう散っていくのかという運命を見届ける作品で、その点を視聴者の方は面白いと思ってくださるのではと思います。
特に最終回は、「北条義時の一生とは、何を成し遂げて何を得たのだろうか」と思いを巡らせていただけるのではないでしょうか。エッという驚きがありつつ、家族の物語という軸は一度もブレなかったと実感していただけるはずです。
新納 そろそろ外も暗くなってきたのでエマさんには室内に戻っていただいて……僕はこれから、昨日見そびれた『鎌倉殿』を見たいと思います。
●実衣と全成が惹かれ合った理由、二人が「全成の死から物語が変わった」と語る理由、三谷幸喜さんの脚本のプレッシャーなど、対談の全文は12月22日(木)発売の『週刊文春WOMAN2023創刊4周年記念号』に掲載。
この他、「『鎌倉殿の13人』ロスのあなたに」として、脚本を手掛けた三谷幸喜と阿川さんが“ダークヒーローの最期”について語る対談もご覧いただけます。
INFORMATION
大河ドラマ『鎌倉殿の13人』 最終回「報いの時」
NHK総合ほか 12月18日(日)20時~
【あらすじ】
反目する北条義時(小栗旬)を討ち取るため、義時追討の宣旨を出し、兵を挙げた後鳥羽上皇(尾上松也)。これに対し、政子(小池栄子)の言葉で奮起し、徹底抗戦を選んだ幕府は、大江広元(栗原英雄)や三善康信(小林隆)の忠言を聞き入れて速やかに京へ派兵することを決断。泰時(坂口健太郎)、平盛綱(きづき)らが先発隊として向かい、時房(瀬戸康史)らが続く。
【週刊文春WOMAN 目次】アーチャリーと呼ばれた少女は39歳になった/母、樹木希林とお経/令和の女性皇族はなぜ“生きづらそう”に見えるのか/「鎌倉殿の13人」ロスのあなたに
2023創刊4周年記念号
2022年12月22日 発売
定価660円(税込)