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 この「定額料金制度」に反応し、県議会で提案をしたのが山口県議会議長である柳居俊学である。僧侶の顔も持つ県議会の大物は「現実直視の発想の転換による低コスト出口の多設と料金定額制への移行」と副題を付けた提案を行った。この際、柳居が用意した図表はわかりやすい。料金所という施設がどれほど経済的な障壁であったかが、手にとるようにわかろうというものだ。

柳井が県議会で提案したテーマの資料

 山口県という「地方」に拠点を置く柳居がそう指摘したのは当然だ。「地方」は高速道路の料金に強い危機感を持っている。「都市部」と「地方」との機会の平等を担保するための基本的な条件は、交通や移動手段における不均衡がないことだ。料金の引き下げを求める声は、地方行政をあずかる者たちから大きくなるばかりだ。

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都市部と地方のあいだにそびえ立つ巨大な経済障壁

 例えば、その納税額が8000億円を超えた「ふるさと納税」。この先もさらなる拡大が見込まれている“成長分野”である。この「ふるさと納税」でも都市圏の自治体と地方の自治体との間で大きな溝が出来ている。2019年の法改正により「送料など返礼品の費用総額が寄付額の5割以下」と決められたからだ。地方自治体における送料などの費用負担は、都市圏の自治体とは雲泥の差となっている。単純に、寄付額全体における送料負担を地域別に比べてみよう。

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関東 4.7%
北海道 9.7%
九州 8.7%
近畿 5.1%
東北 6.5%
中部 5.8%
四国 7.7%
沖縄 4.8%

 大都市に近い自治体ほど送料負担が軽いことが見て取れる。無論、ふるさと納税という名の寄付集めに有利になる。

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 これでは怨嗟の声が地方の自治体から上がるのも当然だろう。もちろん送料負担の内訳には空輸も含まれるが、国内輸送の場合はトラックなど陸路での輸送が50%以上をしめている。「高速道路の高額料金」は地方の自治体にとって大きな足かせであり、都市部と地方のあいだにそびえ立つ目に見えない巨大な経済障壁となっているのである

一向に変わらない「高速道路の高額料金」

 現在、北海道知事を務める鈴木直道は、かつての夕張市長時代に何度となく次のような主張を繰り返していた。

「最大の地方創生は移動コストをさげること」

 この問題意識から生まれたのが田中角栄の『日本列島改造論』だった。繰り返すが、田中が訴えたのは、都市圏と地方との格差の是正だった。地方都市をあずかっていた鈴木の問題意識は田中のそれとまったく変わらない。