前編冒頭に記した『日本列島改造論』から50年が過ぎ、日本は高速道路がまさに網の目のように張り巡らされた。地方と都市の距離は物理的には断然近くなった。「改造論」の説くところによれば、物が流れ、人は動き、地方経済も活発になるはずだった。ところが、いまだ地方と都市圏との経済格差は開く一方で、都市圏への経済集中、人口集中は止まらない。
一体どこに原因があるのか? 物や人が動く術はあるのにそれが有効に活用されていないに違いない。その原因の1つが“バカ高い”高速道路の料金。長く走れば走るほど料金が高くなる。世界でも稀有な「距離制道路料金」は“見えない経済障壁“となってヒト、モノの自由な移動、交流を妨げている。
海外の高速道路の料金制度のしくみ
「距離制道路料金」システムは、日本初の高速道路「名神高速道路」(昭和38年。尼崎から栗東。およそ72km)が建設・運用され始めた時から導入されている。ではなぜ、この距離制道路料金というシステムが採用されたのか? 確たる資料、確かな議論の形跡は、制度を堅持する国土交通省には残っていない。
ゆえに類推するしかないのだが、日本初の高速道路の建設当時、つまり昭和40年前後には、日本のモノ、ヒトの最大輸送手段だった国鉄(現・JR各社)の債務超過が1000億円を越えていたのが理由のひとつだっただろう。債務超過は現在の貨幣価値に換算すると、優に10倍以上の1兆円を超えていた。こうした国鉄の状況を勘案し、国鉄以上に安いインフラ輸送手段を国民に提供することがはばかられたのかも知れない。鉄道と同じような距離制の料金制度を採用したくなったのも無理はない。
先に、「距離制道路料金」は世界でも稀有だと書いた。では海外の高速道路の料金制度はどうなっているか。
ドイツ・イギリスは原則無料で高速道路を解放
国土交通省がHPなどで発表している「諸外国における高速道路料金の動向」を見れば、あたかも海外でも「距離制料金制度」を採用している国が多いかのような印象を受ける。しかし、これを鵜呑みにするわけにはいかない。明らかな意図を持った“捏造”に近い一覧だからだ。それは具体的な国名を見れば明らかである。
まず日本と“同じ”ように距離制料金制度を導入している国として、国交省は「フランス」「イタリア」「スペイン」「ポルトガル」といった国々の名前を挙げる。こうした並びを見て、違和感を覚えるのは筆者だけだろうか?