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 工業国であり、輸出大国である日本と比べるのに適切な選択だろうか。基本的に農業国であり、大企業は国営というフランス。以下、スペインやポルトガル、イタリアなどは工業国とは言い難く、国力も日本の半分以下。人口や国土の広さも比較の対象とするには余りに違いが大きい。

不自然な比較の対象(国土交通上HPより)

 国力、工業国という性質、人口、国土の広さなどが似かよう国々、たとえば「ドイツ」や「イギリス」などとの比較で論じられるべきだろう。そうした観点から見るならば、日本との違いは顕著だ。ドイツもイギリスも原則無料で高速道路を開放している。

「高速道路定額化」は永続的な経済効果も絶大

 栗岡は言う。「道は国家なり」と。

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 道は国力を象徴する。すなわち経済を活性化させ、民を豊かにする共有財産として道は存在するのだ。ましてや、高速道路といえば、迅速にヒトとモノを運ぶことを使命として建設された国民の共有財である。その運営は国力を測る大きな指標だろう。高速道路そのものの質、安全性、メンテナンス、補修維持を行う人員の質などあらゆる能力、努力が求められる。

高速道路定額走り放題を訴える栗岡完爾氏 Ⓒ文藝春秋

 一時、民主党が政権にあった時期に掲げた「高速道路無料化」を栗岡は現実的ではないという。その代わりに栗岡が好例に挙げたのが、麻生太郎首相時代に取り組んだ「高速道路休日上限1000円」という政策だ。

 リーマン・ショックによって落ち込んだ経済の再生の一環として実施され、ETC利用の普通自動車、軽自動車、自動二輪車に限り地方部の高速道路の通行料金を上限1000円にするというものだった。期間は2009年3月から2011年6月まで。当初こそ懐疑的な見方が大勢を占めた政策だったが、結果としては観光効果だけでおよそ3000億円。その間接効果は8000億円を超えたという試算が出ている。

  この絶大な経済効果をもたらした“高速道の上限1000円”制度。さらにこれを推し進めて栗岡の提唱する「高速道路定額化」を実施すれば一体何が起きるか。現行の「対距離制度」では通行券を発行するため、そして精算を行うための「料金所」が当然必要となる。出口にあたる料金所を確保するために巨大な用地の買収、施設の建設費など莫大な費用が必要となる。これらのコストはすべて必要なくなるだろう。

地方では料金の引き下げを求める声が大きくなるばかり

 観光に与える永続的な経済効果も絶大だ。わずかな期間に実施された“上限1000円”ですら3000億円である。「GoToトラベル」のような一時的な弥縫策などとは比べ物にならないくらいの経済効果が見込めることになる。国内旅行の賦活に成功すれば、実にGDPは80兆円増えるという試算もある。