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“医学部9浪”の31歳娘が58歳の“モンスター母”を殺害、遺体をバラバラに…滋賀の新興住宅地を震撼させた「衝撃事件」の一部始終

『母という呪縛 娘という牢獄』より #1

2022/12/18
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 直後、あかりは三度にわたって母になりすまし、お礼のメールを書いている。  

 2月4日

 穂波ちゃ~ん♪♪ 昨日は節分ということで恵方巻とおでんを頂いたとあかりから聞きました☆ 既に前もって届けてくれると聞いていたので、わざわざ買わずに済んだし、優しい味の恵方巻とお出汁のきいたおでんがとても美味しかったって言ってた♪ 本当に有難う!穂波ちゃんが気にかけてくれているお陰で、安心して叔母をサポートすることが出来て感謝しているよ~☆☆  

 2月8日

 穂波ちゃん、今晩は! 昨日は五目煮を届けてやってくれて有難う☆ つい最近恵方巻とおでんを頂いたばかりなのに…。あかりは料理があまり得意ではないので、手作りの優しい味付けのものが食べられて嬉しいと言ってたわ… 本当に、もう、ごめんなさいっ。これを良い機会に、いい歳なんだからちょっとは自分で料理しなさい、って言っときました☆

 2月11日

 サラダを持ってきてもらったとあかりから聞きました♪ 自分から進んで生野菜を食べるタイプではないので、とても助かった~☆ サラダだけでなく、パプリカでも彩も鮮やかで、茹で卵やハムまで入っていてとても美味しかったと言ってた♪ 本当に有難う! 

看護師国家試験の受験と新生活

 死体遺棄から1週間、2週間と時間が経ち、2月18日の看護師国家試験を受験するころには、「もう大丈夫だろう」と気が緩み、受験後の自己採点で合格圏内にいることが分かると、すっかり安心してしまった。母がいなくなり1人だけの生活は快適だったし、看護師として働く新生活の準備に時間をとられ、「遺体が発見されたらどうしよう」という心配は頭から消えかかっていた。

 犯行約1ヵ月後の2月25日は、父の誕生日だった。髙崎家では毎年、誕生日にメッセージを交換しあって祝う。すでにこの世にはいない母を装い、あかりが父に誕生日祝いのメールを送った。

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 母は生前、父とはいっさい顔を合わせようとせず、メール連絡だけだった。友人との付き合いもLINEでのやり取りが中心だったので、メールやLINEのメッセージさえ送っておけば発覚することはないと思っていた。

 遺体は、家から約370メートル離れた河川敷の、歩道から5メートルほど下った藪の根元に放置し、土をかけていた。そのため、春になり気温が上がってくるに従って腐敗臭が強くなり見つかる可能性が高くなる。しかしあかりは目前に迫った看護師としての新生活に気をとられ、頭がいっぱいになっていた。

身元発覚

 発覚は思ったより早かった。

 事件から1ヵ月以上が経った3月10日、遺体が発見され、それがバラバラにされた人間の体幹部だと分かると警察の本格的な捜査が始まった。

©iStock.com

 新興住宅や田園が広がるのどかな地方都市の雰囲気は一変した。あかりが現場の河川敷を通りかかると、警察官から声をかけられ、「このあたりで最近、何か変わったことはありませんでしたか」などと訊かれた。

 近隣の聞き込みも始まった。遺体発見5日後の3月15日と16日の両日、自宅に訪ねてきた警察官に対し、はじめは「母と2人暮らし」と答えていたのに、翌日には「母は別のところにいる」と答えたことが疑念を抱かれるきっかけになった。

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