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《18年ぶりの祖国の地》単なるミリオタじゃない「平和な未来のために」旧日本軍九五式軽戦車を取り戻した有志の“血とカネ”

《18年ぶりの祖国の地》単なるミリオタじゃない「平和な未来のために」旧日本軍九五式軽戦車を取り戻した有志の“血とカネ”

genre : ニュース, 社会

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国産でここまでの物を仕上げた日本の技術力に感動

「今はとにかくほっとしています。戦車は保存に適した状況下で保管していて、来年のお披露目に向けて準備を進めているところです。どんなお披露目にしようかといまから色々考えています」

 こう語る小林さんの声は、大きな仕事をやり遂げた達成感に満ちていた。だがしかし、クラウドファンディングで資金を集めたとはいえ、小林さん自身も私財を投げうって今回のプロジェクトを成功させている。何がそこまで小林さんを駆り立てたのだろうか。

Ⓒ文藝春秋/撮影・佐藤亘

「くろがね四起の修繕をしたときに、当時の日本の技術に驚いたんです。確かに欧米の技術に比べたら劣る部分が多いのは事実です。それでもエンジン部分などは当時の最高水準の物だと感じました。今より情報や技術の伝達が遅い時代に国産でここまでの技術の物を仕上げた日本の技術力の高さは、この頃から脈々と現在まで受け継がれているんだと感動したんです。

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過去を見つめ直すことが平和な未来を創っていく

 私は技術屋なのでこういった見方をしてしまいますが、たとえ機械に詳しくなくても本物から感じるものは多いと思うんです。これを見た子どもが将来工学を学びたいと思ってくれればうれしいですし、戦争や国防について考えるきっかけになるような博物館をつくるために活動を続けています」

Ⓒ文藝春秋/撮影・佐藤亘

 今回の九五式戦車の里帰りプロジェクトは小林さんたちが目指す目標のスタートにしか過ぎない。次の戦車を展示に加えるための活動を早くも始めている。

「ゆくゆくは日本で最初に作られた一号戦車から、最新の自衛隊の戦車までを展示できるようにしたいと思っています。現存しないものは模型を作りますが、できるだけ本物を展示したいと思っています。その横に日本軍が使用した小銃や乗用車なども置きたいですね。そうすることで、歴史の授業の年表上でしか知らない戦争を、少しでも現実のものとして感じてもらいたいと考えています。こうやって過去を見つめ直すことが平和な未来を創っていくのだと思います」

 取材時に小林さんがぼそっと漏らした「過去に学ばないとロクなことにならない」という言葉が強く印象に残った。

Ⓒ文藝春秋/撮影・佐藤亘
《18年ぶりの祖国の地》単なるミリオタじゃない「平和な未来のために」旧日本軍九五式軽戦車を取り戻した有志の“血とカネ”

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