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原作者・西村京太郎との思い出

 原作者である西村京太郎は今年3月に逝去。著作が700冊に迫り、累計部数が2億部を超える大ベストセラー作家だった。訃報に接したとき、高橋は、悲しみに打ちひしがれたという。

「西村さんの新作が読めない、というのは寂しいです。思い出すのは、あたたかい笑顔ですね。原作者にお会いするときは、やはり緊張するんです。ところが、初めてお会いした時も、とても優しく微笑んでくださって。その後もずっとそうでした。私たちが作るドラマも、楽しんでくださっていたようです。お住まいだった、湯河原の名産品をよく送っていただきました。干物やミカンもとても美味しくてね。2012年の西村先生の著作500冊記念のパーティーに伺ったときの笑顔も、素敵でしたね。

著作500冊記念のパーティーにて ©️文藝春秋

『SLやまぐち号殺人事件』が最後の小説になってしまったことが寂しいですね。5号車を乗客ごと消してしまうトリックが、壮大過ぎて、予算オーバーでドラマ化できない、なんて言いましたけれど、今作は、小説として本当に面白かった。高杉晋作にあてた恋文が、事件の謎を解く手掛かりになるんですが、西村先生の歴史観が素敵なんです。高杉晋作の描きかたも、『西村先生』らしい。私は西村先生の小説を読むときは、ついつい、『これは映像化したい』『でも、予算はどうだろう』なんてハラハラしながら読みますが、みなさんは、違った意味で、ドキドキしながら楽しんでもらいたいですね」

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 俳優・高橋英樹は12月29日放送の最新作『西村京太郎トラベルミステリー・ファイナル 十津川警部のレクイエム』で、長い旅を終える。

「この夏、静岡県の某所で撮影していたんですが、言葉に出来ないほど暑くてね。ただ、嬉しいことに、連日、美しい青空が広がっていて、素晴らしい景色を映像に収められたと自負しています。長いあいだ、俳優をしていましたが、『奇跡のロケ』って、こういうことを言うんだろうな、と。私やスタッフが過酷な環境に身を置いたからこその『映像美』。ぜひ期待してもらいたいです。俳優は楽をしていたら、良い画はとれないんです。

 最後の十津川警部になりますが、最新作をどうぞ楽しんでもらいたいと思います。2時間で100%犯人を捕まえることを約束します。検挙率100%ですから(笑)。絶景のなかで、人間が持っている善と悪の感情が描かれ、犯人の悲しさがまじりあった十津川警部シリーズは、私にとってエンタメの原点でした」

高橋英樹(たかはし・ひでき)/1944年2月10日生まれ。1961年デビュー。『伊豆の踊り子』『男の紋章シリーズ』など、映画黄金時代の作品に多数出演。テレビにおいても『桃太郎侍』『三匹が斬る!』など代表作も多く、時代劇スターの地位を確立。現在はドラマの他、バラエティ番組などでも幅広い活躍を続けている。