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「絶対音感があるんやろな」

「マイナーの試合で思いっきり三振した後、メジャーの試合でヒットを打つみたいな感覚でしたね」

 プラス・マイナスのネタは非常にわかりやすい。そして、技術が突出していた。若くして寄席で必要な条件を兼ね備えていた。

 ミキの昴生は、プラス・マイナスをこう賞賛する。

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「コンビニとか、消防士とか、NSCの手みせ(ネタの発表会)でやったら、ありきたり過ぎて怒られるような設定ばっかり。でも、あれだけウケる。寄席のお客さん、ヒーヒー言ってますもん」

 その頃、ともにbaseよしもとの舞台に立っていた銀シャリの橋本も言う。

「滑ってるの、見たことないですもん。精密機械みたいな間ですから。『太鼓の達人』で言えば全部、ど真ん中。全部、100点。外すことがない。絶対音感みたいなのがあるんやろな。ただ、うま過ぎて、それが逆におっさん臭かったんかもしらん。今、ようやく年齢が実力に追いついた感じがするもんな」

 仲間の誰もが実力を認めていた。しかし、岩橋はそうした言葉を素直に受け止めることができなかった。わかりやすいと言われれば言われるほど「自分たちはM-1に不向きなんだ……」とどツボにはまった。

「M-1って、こんなこと考えるやつの頭見てみたいわみたいなネタが評価される。わかりやすいということは、自分たちはそういうものは生み出せないんやな、と。だから、決勝に行かれへんかったんやという闇に落ちていくんです」

 M-1のイメージを決定づけた先輩コンビがいる。笑い飯と千鳥だ。笑い飯は、第2回大会から9年連続で決勝に進出し、10年に王者となった。千鳥は4度、決勝の舞台を踏んでいる。いずれも「M-1の申し子」とでもいうべきニューウェーブだった。

上方漫才大賞に選ばれた千鳥

 二組の漫才を初めて見た時、岩橋は「なんやこの漫才は……」と雷に打たれたような衝撃を受けた。