――そうした作画的なリアリズムと、先ほどの「マンガはデタラメでいい」という考え方は……。
北条 矛盾するでしょ?(笑)リアルなのに嘘が一杯、ってのが僕は好きなんですよ。普通の人が演じる、ありえないコメディ……ってあるじゃないですか。映画でいえばジム・キャリー主演の『マスク』とかね。ああいうデタラメなのが好きなんです。
――嘘(フィクション)を成り立たせるためにリアリティで担保してあげている、ということですか?
北条 そういう風にできればいいな、と思っています。
「ジャンプ」連載マンガに足りなかったもの
――北条作品に共通する「家族愛」のテーマは、『キャッツ・アイ』連載中に意識したのでしょうか?
北条 そんなに難しい話じゃないんですよ。「ジャンプ」で連載しているほかのマンガには“日常”が足りないな、と感じてたんです。
みんな戦ってばっかりだったでしょ?(笑)「いつ寝て飯食って勉強してるんだ?」っていう疑問が、自然と湧くんですよね。その疑問を広げていくと、悪役のキャラクターにも家族はいるはずなんだよな、っていう感覚があっただけで、別に「家族愛を描こう」と意識していたわけではなかったんです。
――誰もやっていないから自分が描こう、と?
北条 いや、単純に気になっていたんですよ。ずっと戦っているマンガは面白いけど自分だったらイヤだな、と思ったんです。休息も必要だよな、飯も食いたいよな、お母さんと話したいよね……と。人を作るのは家族なんだから、その辺りを土台に考えていってもいいんじゃないかな、ということなんですよね。
「家族って血なのか?」
――「家族」を意識するようになったきっかけはなんでしょう?
北条 なんでしょうねぇ……。家族で似た癖を見つけると、「血だね」と表現されることが多いですが、その度ごとに「家族って血なのか?」って違和感を覚えていたんです。