そもそも父親と母親は、もとは他人同士なんだから、家族の構成要素の第一は「他人」なんじゃないかと思うんですよ。血が繋がっていても家庭崩壊が起きることはあるし、血の繋がりのない子どもと絆を結ぶことはできる。家族の結びつきを「血」に求めるのは「イヤだな」と引っ掛かっていたんですよね。「人ってそんなもんじゃないよね?」と。そういったところから発想していって生まれたのが『F.COMPO』でした。
――「人を作るのは家族」という言葉が印象的です。
北条 (家族背景とか)そういうことを考えながらキャラクターを描くのが好きなんです。群衆シーンもそうで、自分で描くときは「こいつは次男坊でおっとりしているから、みんながゲラゲラ笑っているのに、ひとりだけポカーンとした表情をしている」とか設定を考えますね。
――『キャッツ・アイ』にも群衆シーンがありましたね。
北条 ……いま見ると、ほぼほぼ自分で描いてますね。なにやってんだ当時の自分、忙しいときに(笑)。
――こういう見開きは手塚治虫先生や石ノ森章太郎先生がよくやってました。
北条 そういえばそうですね。「なんでこんなところにヒョウタンツギがいるんだ?」とか、見てました。ああ、自然と影響を受けているのかもしれないですね。
“マニアックではないし、マンガが嫌いというわけでもない”読者が読んでわかるのか?
――北条先生の作品はいろいろな構図を用いていますが、何が描かれているかわかりやすく、読みやすいという特徴があります。
北条 それはちょっと意識してますね。「ちゃんと伝えられなかったらマンガじゃなくない?」という思いはあります。
――そう思うようになったきっかけは何でしょうか?
北条 僕の場合、結婚してから想定読者がカミさんなんですよ。「カミさんが読んでわからなかったらダメだよな」って思っています。
うちのカミさんはマニアックではないし、マンガが嫌いというわけでもない。いちばん一般の読者に近い感覚があるので、読んでもらって「面白かった」とか「わかりづらかった」と言ってもらえると、「なるほどなるほど」と思いますよね。それにちょっと意地悪な言い方をするとですね、担当編集のために描きたくないじゃないですか(笑)。
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