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『どうする家康』が期待できる理由

『どうする家康』は「ユーモア」のある脚本を書ける古沢良太による「戦国」ものに「スター」(ジャニーズの松本潤)を配し、人気要素をもれなく押さえてある。なにより脚本家が古沢良太であることは大きい。映画化もされヒットした『コンフィデンスマンJP』や『リーガルハイ』シリーズなど人気テレビドラマや映画を多数手掛けてきた古沢。漫画も描けることを生かしたクセの強いキャラクターたちによるアップテンポの会話劇を夢中で追っているとある瞬間、引っくり返され、そこに得も言われぬ快感が生まれる。計算され尽くした構成力と天性のリズム感と腕力の強さによる逆転劇にはどこか往年の少年漫画を思わせるような明るさと切なさが入り混じり、多くの視聴者を捉えて離さない。

 古沢の描く家康は、様々な局面で「どうする?」と悩みながら最適解を選択していくだろう。そして、現時点で公表されている家康を取り巻くたくさんの家臣や家族や敵対する登場人物と演者を見ると、個性豊かな人たちによる群像劇になるのではないだろうかと想像できる。歴史的な出来事をなぞるのではなく、その時代に生きた人々が生き生き活写されるであろうことは間違いない。

大河に欠かせない要素は「女性」

 続く2024年の『光る君へ』は『おんな城主直虎』(17年)以来の女性主役の大河となる。脚本家、プロデューサー、チーフ演出、主演が女性という稀有な座組で描かれる華やかな平安貴族たちによる政治や恋の物語。紫式部と藤原道長のソウルメイト的な関係が軸と聞くと『篤姫』で堺雅人演じる徳川家定と篤姫の夫婦の物語に人気が沸騰したことを思い出す。大河にもうひとつ欠かせない要素は「女性」である。『直虎』では直虎と幼馴染の直親と政次との関わりが求心力となっていた。都度都度、濃密な愛の物語が大河に息を吹き込んできたのである。

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『篤姫』主演の宮﨑あおい ©getty

 最後に、戦国、幕末ものでなく、近代オリンピックの歴史を描いた『いだてん~東京オリムピック噺~』(19年)は視聴率こそ振るわなかったが教養と娯楽を兼ね備え、かつ映像として見応えのある秀作であったことも記しておきたい。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2023年の論点100』に掲載されています。