60年目にして大河ドラマをアップデート
時代の要請に応えることができそうな家康を題材にした『どうする家康』には新しい大河ドラマを作ろうとする意気込みが感じられる。まずは「どうする」と問いかけるタイトルの新しさ。さらにアイコン的なタイトルロゴ。汎用性があり、デザイン性の高いグッズを作りゆかりの地で販売することで番組以外の広がりを狙えそうでもある。なにしろいまは、視聴層の若返りや、同時視聴ではなく配信視聴の時代に合わせた番組づくりが求められている。新たな視聴者が楽しむ話題づくりとSNSでの拡散が課題なのだ。
大河ドラマは60年目にして『どうする家康』でシン・大河を目指しているのではないか。念のため説明すると「シン」とはゴジラ、ウルトラマン、仮面ライダーと長い歴史をもつコンテンツを見て育った庵野秀明監督が敬意をもって新たに作った作品群の冠詞のようなものだ。庵野監督作独自の言葉を借りることは憚られるが、令和的なアップデートの響きという点で例えとして使用させてもらった。
ヒットに欠かせない「戦国」「幕末」「三谷幸喜」「堺雅人」
これからの大河には何が求められているのか。21年2月に文春オンラインで公開された「大河ドラマベスト1」のアンケート結果から筆者は、近年の大河に求められている要素を「戦国」「幕末」「三谷幸喜」「堺雅人」と分析した。「三谷」はユーモア、「堺」は華と親しみのあるスターという意味合いだ。この数年の大河を振り返ると『麒麟がくる』は「戦国」もので、前述したようにこれまでとは違うアプローチで明智を描いた。「幕末」ものの『青天を衝け』(21年)は渋沢栄一と徳川慶喜の身分を超えた友情を軸に幕末の青春群像といった趣があった。「三谷幸喜」脚本の『鎌倉殿の13人』(22年)は鎌倉を舞台にテッペンをとるためのデスゲームを笑いも交えて描いた。