「AIアバター」による自分に都合のいい世界が可能に
ストーカーや痴漢行為をどう防ぎ、どのように罰するか。リアルで結婚しているユーザーがメタバース内で他のユーザーと恋愛関係に陥った場合に不倫と呼ぶのかどうか。こうしたメタバース内の恋愛関係に関しては、法的に議論すべき問題もあるかもしれない。すでにいま、法学者や弁護士もメタバースに関する政府の会議に呼ばれています。他方で、「メタバースに法規制はいらない」とか「国家権力を介入させるな」といったWeb3的な反発も起こっています。
メタバースのなかで、新たな知人や友人、恋人をつくるようなコミュニケーションがなされる一方で、コミュニケーションなしに異世界を楽しむスタイルを選ぶ人もいるでしょう。今でも、メタバース内で自分のいる周りの空間や土地に他人を入れないようにすることができます。
将来的には、そこに「AIアバター」ばかりを配置することもできるはずです。これは人が操作するのではなく、AIによって人のように振る舞うことのできるアバターです。そうなると、自分に都合のいい世界ができあがるので、リアルな世界に比べて居心地よく感じる人も大勢出てくるかもしれません。
1人で眠るのが寂しいという人にうってつけの解決法
人とのコミュニケーションがなされなくなるので、本書の定義ではこれはもはやメタバースと呼べなくなります。代わりに「ソロバース」ということにしましょう。「ソロ」(単独)の「ユニバース」(宇宙)ということで、この宇宙にオレ様1人だけという唯我独尊状態です。
面倒臭い人間関係をスキップできるこうしたソロバースを望む人が多数になれば、人間の根本も揺らぐでしょう。人間関係のトラブルなどの問題に直面し克服しながら成長していくという、近代における理想的な人間像から離れて、努力や成長が一切ないような世界になる可能性もあります。
その一方で、「VR睡眠」といってメタバース内で何人かで一緒に寝る人もいるようです。リアルには各々の家のベッドに横たわっているけれど、ふと目を開けるとHMD越しに一緒に眠る仲間のアバターを見ることができるというわけです。1人で眠るのは寂しいけれどパートナーがいないという人には、うってつけの解決法です。
全く人間ってヤツは1人でいたいのかいたくないのか、てんで分からないことになってきましたが、メタバースが普及するにつれて、知られざる人間の本性が露呈するかもしれず、そういったところにも私は興味を抱かされます。