2021年10月、フェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズ(通称メタ)に改めたことで、一層注目を集めるようになった「メタバース」。これからメタバースがさらに普及していくなかで、貨幣、雇用、そして人間の身体はどのように変わっていくのだろうか。今後の社会、資本主義経済の行方とは――。

 ここでは、経済学者の井上智洋氏が、メタバースの普及によって資本主義がどのように変容するかを綴った『メタバースと経済の未来』(文春新書)から一部を抜粋してお届けする。(全2回の2回目/1回目から続く)

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知的好奇心の低い日本

 企業による投資と言えば、今まで工場における機械設備の設置を意味していましたが、頭脳資本主義が到来している中で、今や研究投資に比重を移しつつあります。しかし、巨大IT企業の存在しない日本は、AI研究に投資する資金が圧倒的に不足しています。

 AI革命(第4次産業革命)は、IT革命(第3次産業革命)と地続きになっているので、IT革命に成功した企業は続いてAI革命にもお金を使えるのです。だから、「AI研究をリードするグローバル機関」のトップはIT革命の勝者であるグーグルであり続けています。

 そして、巨大IT企業を数多く抱えるアメリカと中国が、AI研究でトップを競い合っています。IT企業の時価総額ランキングのトップ20に入っている企業は、ほとんどがアメリカと中国の企業です。このようなIT企業がAIなどの研究に資金を惜しみなく注ぎ込んでいたら、とてもではないが日本はアメリカや中国には勝てません。

日本人の大人は他の国の大人と比べて勉強をしない

 資金力だけの問題ではありません。日本は数学的な思考力や国語の思考力は他国に比べてかなり高く、調査によっては1位ですが、デジタル技術スキルは63カ国中なんと62位です。

 日本人が他の理工系分野に比べて比較的ITが苦手というのは事実でしょうが、ITさえなんとかすれば済むという話でもありません。問題はもっと根深く、日本人の大人は他の国の大人と比べてぶっちぎりで勉強しません。