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知的好奇心が低ければ、時代にもついていけなくなる

 講義の終了時に受ける質問は、「テストには何が出るんですか」とか「テストは選択式ですか、論述も出ますか」というものばかり。知的好奇心を満たすことではなくテストでいい点をとるための対策が勉強と考えているのなら、そうなるのも不思議ではありません。

 そういうわけで日本人は、20歳ぐらいまでは勉強せざるを得ない環境に置かれるので学力が高いものの、それ以降は、20歳ぐらいまでに身につけた学力でなんとか残りの全人生を乗り切ろうとする。

 ところが、科学技術が社会や経済に与える影響は大きく、毎年のように、ブロックチェーン、フィンテック、AI、NFT、DAOなどと新しい概念が出ています。だから、大人になっても勉強し続けなければもはや変化に追いつけず、新しいビジネスをうまく展開することもできないはずです。知的好奇心が低ければ、そうした変化にキャッチアップする能力もおのずと低くなり、時代にもついていけなくなるでしょう。

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 1970年から95年までの25年間は、比較的科学技術が社会や経済に及ぼす影響が少なかった時期です。その時代であれば20歳までの知識で乗り切れたかもしれませんが、今では難しくなっています。

研究論文の減少は科学技術の衰え

 このように知的好奇心が低いままでは、日本の相対的な没落は避けられないでしょう。詰め込み教育が絶対にいけないわけではないにせよ、子供達の知的好奇心を育てられなかったのは、はっきりと教育の大失敗と言っていいでしょう。一教育者として私自身も反省することしきりです。

 さらに日本は科学力の低下も顕著で、図4のように、2000年くらいから日本の科学論文の数はゆるやかに減少しています。他国は当然論文数を増やしていて、なかでも中国は指数関数的に増えています。

 

 研究者の世界では科学技術の成果を論文として発表するので、その数の減少は科学技術の衰えとも言えます。つまり、一般的な労働者の勉強意欲も低いうえに、科学者の成果も減少傾向にあるということで、日本はかなりピンチです。