2008年に公開された映画『おくりびと』で知られるようになった、「死」への旅立ちを手伝う職業“納棺師”。松竹芸能所属のおくりびと青木さん(35)は芸歴9年目のお笑い芸人として活動しながら、実家である福島県の葬儀会社で納棺師としても勤務する“リアルおくりびと”だ。
お笑い芸人と納棺師、振り幅の大きい仕事をこなすおくりびと青木さんとは一体、どんな人物なのか。2足のわらじの苦労や知られざる納棺師の仕事内容、さらに自身が経験した恐怖体験や、なかなか聞けない近年の葬儀事情まで話を聞いた(全2回の1回目。#2を読む)
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高校を出て、葬式の専門学校に通いながらお笑いを勉強
――納棺師の仕事内容について教えていただけますか。
おくりびと青木 納棺師の仕事は簡単に言うと、亡くなった方を綺麗にするお仕事です。例えばお化粧したり、ご希望があれば衣服の着せ替えをしたり。あとはお身体に傷や痣があればお手当てをして、生前のような自然な状態になっていただくというお仕事ですね。
――そもそも納棺師というのは、葬儀会社から依頼されるのでしょうか。
おくりびと青木 納棺師さんによっても違うんですけど、基本的には葬儀会社の下請けとして納棺師の会社があるんですね。なので、葬儀会社さんから仕事の依頼を受けて初めて仕事が発生します。ただ、私は実家である葬儀会社に勤めているので、そのまま納棺師の仕事をすることになります。
――ご実家が福島県にある葬儀会社ということですが、会社を継ぐために納棺師の仕事を始めたのでしょうか。
おくりびと青木 いえ、小さい頃からずっとお笑い芸人を目指していました。でもどうやったらお笑い芸人になれるのか全く分からなかったので、とりあえずお笑い芸人になるために東京に行きたいと漠然と考えていました。そんな時に父親から「高校卒業してからどうするんだ。何も考えていないのであれば、実家のお葬式の仕事を手伝ってくれないか。継いでくれないか。ただ、継ぐにしてもまずはお葬式の専門学校があるからそこに通いなさい」と言われて。父親が勧めたお葬式の専門学校が神奈川県にあると聞いて、これだったら専門学校に通いながらお笑いの勉強もできるなと思って、専門学校に通い始めました。
そもそも納棺師という仕事自体知らなかったのですが、ある時、専門学校で納棺師の仕事をしている方が講師として来て下さったんです。メイクの授業をしてくれたり、ご遺体の処置の仕方を教えてくれたり。そういった納棺師の仕事を教わった時に「これって今後、使えるんじゃないかな」と思ったので、卒業後に納棺師の会社に入社しました。あとは、養成所に通うためにもそれなりに貯金しないといけないので、納棺師をやりながらお笑い芸人を目指していました。