部下を適材適所でマネジメントする能力が求められる「上司」の仕事。しかし、マネジメント以前の問題として、若手社員とのコミュニケーション自体に悩むリーダーも少なくない。
ライフネット生命の創業者、そして、立命館アジア太平洋大学学長へ就任するなど、さまざまな業績を上げてきた出口治明氏は、どのように部下とのコミュニケーションを考えてきたのか。同氏の著書『「教える」ということ 日本を救う、[尖った人]を増やすには』(角川新書)の一部を抜粋し、紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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飲みニケーションの文化は日本独自のもの
リーダーは、職場の部下のことをよく知る必要があります。なぜなら部下の適性にふさわしい仕事をあてがうのがマネジメントの役割だからです。つまり、人材のポートフォリオを上手に組むことがマネージャー本来の仕事なのです。人を上手に使おうと思ったら、部下の得意不得意、向き不向きを前もって把握しておかなければなりません。
日本の常識で考えれば、部下との飲み会やゴルフは有効かもしれません。しかし僕自身は、就業時間外にマネジメントを行うのは邪道だと考えています。部下もゴルフや飲み会が好きならかまいませんが、そうでない人もいるからです。
以前、『プレジデントオンライン』の中で、「悩み事の出口」という連載コーナーを受け持っていたことがあります。このコーナーで、「同じ部署の上司や同僚はみな酒好き。仕事後の飲み会が多くて睡眠不足が悩みです」という相談を受けました。
僕は次のように答えました(一部抜粋)。
「職場は何よりも仕事をするところです。ベストコンディションで毎日出勤するのが社会人の最低限の心構えです。だから『僕は会社に貢献したい。飲みに行くとフラフラになっていい仕事ができないから、今日は勘弁してください』とキッパリと断ってみたらどうですか」
また、ある企業の管理者研修に招かれたとき、「この10年来、ほぼ毎日、飲みニケーションを行っている」という参加者がいました。
僕はその人に、「厳しいことを言わせていただければ、今すぐ辞表を書くべきです」と思わず言ってしまいました。