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「バラバラのご遺体も必ず人間の形に…」“納棺師&芸人”二足のわらじを履く青木さん(35)がとてもネタにできない「知られざるおくりびとの日常」

お笑い芸人”兼“納棺師” おくりびと青木インタビュー#1

ネタはフリップを使った「お葬式の雑学」

――普段はどういったネタをされているのでしょうか。

おくりびと青木 お葬式のキャラクター、“おくりびと青木”という名前なので、フリップにお葬式の雑学ネタみたいなのを書いてやらせていただいています。

 例えば、この葬儀業界でも“チップ”の存在があるんですね。これを“チップ”と呼んでしまうと、とてもいやらしい意味合いになってしまうので、私たちの業界では、これを“心付け”と呼ばせていただいています。ただ、この心付けを頂戴するにもマナーがあるんです。それは“2回お断りしないといけない”ということです。というのも1回で受け取ってしまうと、それはがっついているように見えてしまうし、3回以上断ってしまうと、相手の気持ちを害してしまう恐れがあるからなんです。ですので、必ず2回お断りした後にお受け取りするっていうルールになっているんですね。3回目の「どうぞ」で「いただきます」と。これで私のものになるわけなんですけれども。ただ、ここで問題が発生するのですが、心付けをいただいたことを会社の先輩や上司に報告しないといけないんです。その時に上司が「これはお返ししないといけないものだから」とか「それは受け取ってもいいですよ」という話になるのですが、先輩とか上司によっては、「これは受け取ってはいけないものだから私の方で代わりに返しておくよ」と言って、ご遺族様に返すフリをして自分のポケットに入れてしまうという最低な人もいるわけなんですね。なので、心付けのいただき方というのもかなり難しいところではあります。

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「お笑い芸人」兼「納棺師」のおくりびと青木 ©文藝春秋(撮影・宮崎慎之輔)

 こういったお葬式のネタをわかりやすくフリップにしてやっているんですけど、雑学ネタなので、ウケるとかスベるとかじゃないんですよ。お客さんが「へぇ~」って言っちゃうんです。よくお客様が(ライブ後の)アンケートで、「おもしろかったです」とか「ここはこうでした」とかって書いてくれるんですけど、私の場合だと「勉強になりました」とか「いい休み時間でした」とかお笑いと全く関係ないことを書かれちゃうんです。だからお笑いとしては全然評価に値しない状態になっちゃっているんですよね。これは何とかしないとなって、今ちょっと悩んでいる状態ですね(笑)。

――憧れの芸人さんはいらっしゃいますか。

おくりびと青木 憧れの芸人さんはNONSTYLEさんですね。10年以上前なんですけど、友達のツテがあって、NONSTYLEさんが出ていたCMのお手伝いをさせていただいたんです。その時に、全くカメラが回ってないにも関わらずNONSTYLEさんが現場にいたエキストラの人を楽しませようと何かネタをやってみたり、話しかけたりして、その場をすごい盛り上げてくださったんですね。そのサービス精神もかっこいいな、こういう人たちになりたいなって思って、NONSTYLEさんを目指しています。