故人様の足元に白い長い棒状のものが…
――そういった悲惨な状態のご遺体を担当することも多いのでしょうか。
おくりびと青木 そうですね。基本的には状態のいいご遺体ばかりですが、なかにはお風呂で亡くなったり、海で亡くなったりした方だと、体が膨れてしまって人の形ではなくなってしまっている方もいます。言葉では言い表せられない程、腐敗臭が強いこともあります。
ある時、おばあちゃんの故人様を担当させていただいたのですが、そのおばあちゃんは交通事故でお亡くなりになられたそうなんですね。私たちが対面した際にも、交通事故でしたので、切り傷とか痣がある状態だったんです。お布団の上に寝ていらっしゃったんですけど、ぱっと見ると故人様の足元に白い長い棒状のものが置いてあったんですね。「あれ? これなんだろうな」と思って持ってみると、ズッシリと重たいものだったんです。「これは故人様が愛用していた何かしらのものなのかな」なんて思っていたのですが、その白い布で包まれたものが、端っこから赤く染まってくるのが分かるんです。「あれ? これはヤバイな」と思って、その白い布を取らせていただいて中を覗くと、その方の右腕だったんです。実は、交通事故の衝撃で右腕を切断してしまった状態だった。
こういった場合、お棺に入れた際にできるだけ人の形を保つようにして入れさせていただくんですね。お顔があるところにはお顔。お身体があるところにはお身体。右腕、左腕、右脚、左脚という感じで。必ず人間の形を保つように置かせていただくんです。たとえ首から下が一切ない場合でも、お顔をその場所に置かせていただいて、その下にタオルとか布を重ね合わせて、人の身体があるように作らせていただきます。そのおばあちゃんは右腕だったので、本来右腕のある場所に返させていただいたわけなんです。そのようにして棺の中にお納めさせていただきました。
――そういった場合は、ご遺族には見せないかたちになるのでしょうか。
おくりびと青木 見せないこともあれば、ご遺族様が見たいという場合もあるので、できるだけ見せられるようにはしますが、「こういう状態です」と必ず説明するようにしています。事故とかでバラバラになってしまった故人様もいますので、やはり肉片だけになるとどうしようもないので、そういった方に関しては警察の方からも説明も入っていますので、そのままお棺の中に入れて火葬する場合もあります。
(#2へ続く)
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