2020年代、“大コンサル時代”ともいえるブームが起こっているという。NHKの調査によれば、就活口コミサイトが発表した東大生・京大生の2023年卒業生の就活人気ランキングにおいて、トップ10の半数をマッキンゼーやボストンコンサルティングといったコンサルティング企業が占めているのだ。

 ここでは、世界トップクラスの外資系コンサルティング会社を12年間生き延びた「超絶テクニック」がSNSで話題のコンサルタント、メン獄さん初の著書『コンサルティング会社 完全サバイバルマニュアル』(文藝春秋)より一部を抜粋。コンサル社員が“圧倒的スピード”で作業できる理由をメン獄さんが解説する。(全2回の2回目/1回目から続く)

写真はイメージです ©iStock.com

◆◆◆

ADVERTISEMENT

いわゆる“コンサルタント”のイメージ

 さて、この記事を読んでいる読者は、いわゆる「コンサルタント」についてどんなイメージを持っているだろうか。

 パリッとアイロンのかかったシャツにスリーピースのスーツと高価な腕時計を身につけ、ホワイトボードの前で3つの論点をMECEに(漏れなくダブりなく)並べ、クライアントに経営課題を説く──私も入社前はそんなステレオタイプなイメージしかなかった。その程度の理解しか持ちあわせていなかった私大法学部卒の私がなぜコンサルティング会社に入ったのか、当時の背景を軽く話しておきたい。

 高校時代にハイスタンダードや銀杏BOYZにはまってバンド活動をはじめた私は、ドラムにちょっとした自信があり、大学になってからは、友人たちとオリジナル曲を作っては吉祥寺や下北沢のライブハウスで月2回程度のライブをして、好評を博していた。時間を自由に使って音楽活動に専念すれば、自分の才能が世間の脚光を浴びて、音楽で食べていけるくらいの収入は簡単に得られるだろうと思っていた。

 ところが東京の音楽シーンのレベルの高さ、周囲の圧倒的な熱に飲み込まれ、根拠のない自信はしだいに打ち砕かれていった。音楽に挫折し、自分の輪郭をとり戻すために、その戦場を就職活動へと移した私は、当時人気のあった外資系投資銀行や総合総社に手当たり次第エントリーしたが、数学が足を引っ張り、それらトップ企業が足切りテストとして課すSPI(適性検査)を突破することはできなかった。

 そんな中、変わり種の私を偶然拾ってくれたのが、採用の裾野を拡げつつあったコンサルティング会社だった。

事業と同様に変化したコンサルタントの服装

 さて、当時は、コンサルタントをめざす者たちのキャリアのスタートとなるアナリスト職は、その名前の通り、提案の土台となるクライアントを取り巻く現状の“調査・分析”業務と結果の取りまとめを主な業務としており、どちらかと言えばオーバーサイズで派手な服が多かった私もパリッとしたシャツとスーツを買いそろえ、仕事に臨む場面が多かった。

 しかし時代の流れの中で、コンサルティング会社全体の事業は多角化した。ひと口にアナリストといっても、その仕事はWebデザインに近い領域からAIを使った解析業務まで非常に多岐にわたるようになった。かつてスーツで固められていたコンサルタントの服装も事業と同様に変化した。同僚たちも、リモート形式の会議であれば相手がクライアントでもUNIQLOのフリースやスウェットシャツで参加することが一般的になっていった。