簡易な例を挙げるならば、クライアントから何かしらの資料やデータを受領した場合、その資料をチームの他のメンバーが見られるような場所に格納し、格納場所を周知する。会議が終われば30分後には議事の要点と期限と担当が割り振られたToDoを展開する。これは コンサルタントであるならば誰の指示を受けるでもなく一息にできる必要がある。
あるいはクライアントの要求仕様書に対して、会社として提案書を作成するとなれば、提案書の目次構成と各目次ごとに記載するメッセージをまとめ、まずは骨子のドラフトとして他メンバーと議論するためのいわゆる「叩き台」を作り、提案キックオフと呼ばれるような内部会議を設定する。
これらを一呼吸でできるのが、コンサルタントなのだ。作業が正確なのは当たり前。その上で、どれだけ速いか? このスピードへのこだわりがコンサルタントと他の職種とを分けるポイントだ。
もちろん作業は原則としてすべて、上司の業務指示に従い行うものだ。しかし、指示を待っていて行動するのと、事前にこう動くであろうと意識しておいて日々の仕事をするのでは、結果として両者の速度は圧倒的に異なる。ボールが飛んでくる所を予測し、予め体をその場所に移動させてボールをキャッチするが如く、日々次の業務を予測しながら行動してはじめて、仕事は圧倒的に「速く」なる。
そうした基本動作を所属しているメンバー全員が無意識に行い、メンバー間の阿吽の呼吸が実現するからこそ、コンサルティング会社の仕事は組織として「速い」のだ。
“速い”はそれ自体が重要な価値
「“速い”はそれ自体が重要な価値だ」とヤマウチに叩き込まれた。
かつてのコンサルタントは上司からよく「自分の時間あたりの単価がいくらかわかってる?」という強烈な圧をかけられながら作業をしていた。現在はパワハラ的言動について業界の自浄作用が働いており、このようなフィードバックをされることはあまりないが、コンサルタント自身は事実として知っておく必要がある。
一般的に、総合コンサルティング企業のアナリスト/アソシエイト1人の月額単価は150万円-250万円であり、1日あたりで換算すれば約10万円。8時間の営業時間で割れば時間あたり1万2500円相当の単価になる。もし資料を4時間かけて作成すればその資料は5万円相当の価値がクライアントにとって存在しないと、割に合わない。プロジェクトごとで、安くても数千万、規模の大きなものだと億単位のお金が動く。
このコスト意識をキャリアの早い段階で魂に刻みつけ、スピードに対するこだわりを身につけることが、コンサルタントのキャリアの第一歩になると言っても過言ではない。