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 例えば朝、何か上司から指示された場合、日を跨いで結果を見せるようでは遅い。朝一で指示があれば、遅くとも午後一に、一度何かしらの作業進捗を上司に見せられるコミュニケーションが必要だ。

 なぜなら、作業の〈手戻りリスク〉を最小化するためだ。その日1日をかけてゆっくりと作業した内容が、上司の意向と全く異なるものであったことが翌日明らかになった場合、もはやリカバリーすることができなくなってしまう。入社1年目の私は、作業を1日かけて行い、翌朝に報告するようにしていたが、「え、1日かけてこれ?」「ごめん。全然指示した内容と違うが……」と差し戻されることが頻繁に発生していた。

20分考えて手が止まれば、即上司にエスカレーション

 1日かけた作業が生産高に結びつかないことは5営業日のうちの20%が既に無駄になってしまったことを意味する。その時点で残りの4営業日でリカバリーが必要となり、本来避けるべき残業が発生してしまう。

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 このような惨事を回避するために、まずは2時間集中し、その中で何かしらのアウトプットが出せるかどうかを自分で考え、そこまでの成果をぶつけよう。

 作業を進める中で20分以上手が止まる場合は2時間を待たずして、即上司に対してエスカレーション(上席への報告)することを心がけたい。20分考えて手が止まるような場合は、作業のやり方がイメージできていないことを意味する。作業の手順を具体的に指示するのは上司の仕事の一環でもあるので、その場合遠慮なく相談しよう。結果としてその方が仕事は早く終わり、かつ残業代が節約されれば、プロジェクトのファイナンスも改善しクライアントの予算を無駄にすることもなくなる。これは立派なクライアントと会社への貢献なのだ。

写真はイメージです ©iStock.com

ボールが来る場所に走る

 仕事の速度の本質は、物理的な作業スピードもさることながら、次に何が起こるのかを予測して仕事を行う“先読み”にこそあるといえる。

 鍛えられたコンサルタントの体は、「Aという事象が発生した場合はB」「Cという事象が発生した場合はD」というように、もはや考えたり悩む間もなくインプットした情報はそのまま神経を伝達し、行動に移るようになっている。そのような基本動作の集合体こそがコンサルタントのスピードの正体だ。

 コンサルティング会社を退職し別の業界に就職したOG、OBはよく、「新しい会社では同僚たちと会話のプロトコルが通じない。コンサルティング会社で働くことがどれだけ効率的で恵まれていることなのかがよくわかった」と過去を振り返る。

 世間からはプライベートのシーンにおいても横文字やホワイトボードを多用するコンサルタント仕草がよく笑いの対象となっているが、特定のシーンにおいては特定のパターンを考えるよりも先に条件的に実行する、というまさにその点こそが、コンサルティング会社が赤い彗星の如くスピード感を持って仕事を推進できる理由だ。