2021年10月、フェイスブックが社名をメタ・プラットフォームズ(通称メタ)に改めたことで、一層注目を集めるようになった「メタバース」。これからメタバースがさらに普及していくなかで、貨幣、雇用、そして人間の身体はどのように変わっていくのだろうか。今後の社会、資本主義経済の行方とは――。

 ここでは、経済学者の井上智洋氏が、メタバースの普及によって資本主義がどのように変容するかを綴った『メタバースと経済の未来』(文春新書)から一部を抜粋してお届けする。(全2回の1回目/2回目に続く)

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人間関係はどう変わるか

 Web3.0の時代が到来しつつあり、ビジネスも教育も娯楽もメタバース化がどんどん進むように思われます。メタバース化とともに社会や人間関係はどのように変化していくのか? 

 現在多くの人が活用しているSNSでは、攻撃的な書き込みをしばしば見かけます。ツイッターなどは、かつてはみなさん「パスタなう」などと当たり障りのないことを書き込んでほのぼのしていました。

 それが普通の中年層はフェイスブックへ、若年層はインスタグラムへと移動したために、今では不平不満や怨念を抱えた人たちの吹き溜まりになり果てています。特に中高年男性が正義感に基づいて攻撃的なツイートを各方面に行い、「触るものみな傷つけ」自滅していく様は痛々しくて見ていられないくらいです。

ノンバーバル・コミュニケーションとは

 ツイッターだけでなく、フェイスブックでも、攻撃的な書き込みをかなり見かけます。そういった殺伐としたやりとりに辟易して「SNS疲れ」をわずらう人も増えています。

 SNSはリアルな日常に比べて、なぜこれほど口喧嘩や罵り合いが多いのでしょうか。おそらく文字だけのコミュニケーションに、人を苛立たせるものがあるのでしょう。顔の表情や声の調子で伝える「ノンバーバル・コミュニケーション」が重要だというわけです。ノンバーバル・コミュニケーションとは、言語以外のコミュニケーションということです。

 それが証拠に、メタバース内ではあまりケンカはなく、利用者同士で仲良くなりやすい。また、リアルの世界でコミュニケーションが苦手な人であっても、メタバース内ではわりと気楽に人と話ができます。