2022年は暴対法(暴力団対策法)施行30年のメモリアルイヤー。ヤクザを取り巻く環境はこの30年で大幅に変化した。その実情について、元ヤクザで牧師の進藤龍也氏と暴力団研究をする異色のヤクザ博士こと廣末登氏の“ヤクザ愛"に溢れる2人の対談をお届けする。

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廣末 進藤さんが18歳でヤクザになったのはなぜだったんでしょうか。

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進藤 僕がヤクザになった平成元年(1989年)頃は、ヤクザというと「いい女を連れて、いい車に乗って、偉そうに威張っている」もので、格好良かったんです。今となっては情けないですが、10代の私はそれに憧れていたんでしょう。昭和のヤクザは「やっちゃん」と呼ばれ、今よりずっと社会の中で受け入れられている雰囲気もありましたし。実際に組に入ると、部屋住み(殴り込みなどの有事に備えて事務所に住み込む担当)や事務所当番とか辛いこともあります。でもそれ以上のメリットがありましたね。現に結構、モテました(笑)。

進藤龍也氏

廣末 それは先生個人ですか? それともヤクザというものがモテる時代だったんですか?

拘置所の中でヤクザがウナギ缶をプレゼント

進藤 自分の組のシマのキャバクラなんかに行くと、関わりたくないと敬遠する子もいる一方で、近寄ってくる女性も多かった。そういう店に対する「みかじめ料」って2種類あって、トラブルがあったときにケツを持つのでお金をもらうものと、逆にお店側が「お金を払うので二度と来ないでください」という意味合いのもの。「お金いらないから、もう来ないでください」と店に言われて、逆にお金を貰ってラッキーくらいに若い頃は思っていましたよ。

廣末 まだバブルが弾ける前ですし、時代ですね。

ヤクザ研究者の廣末登氏

進藤 現在はヤクザが「みかじめ料」なんて要求したらすぐに警察が来ますし、若者が憧れる要素もなくなっているでしょうね。今よりはカタギの人との交流もありましたね。東京で逮捕されて裁判の判決を待つ間は東京拘置所に収監されますが、同部屋の人が裁判から返ってくると「おつかれさま」ということで拘置所で入手できる最も高価なウナギ缶がヤクザもカタギも関係なく振る舞われるんです。金がなくてウナギ缶なんて買えない人にも、ヤクザが買い溜めているものからプレゼントします。大物ヤクザがいると、その雑居房にはウナギ缶が高く積み上げられていましたよ(笑)。