廣末 30年前はそれほど身近な存在だったヤクザが、現在は口にするのもはばかられるような状況に大きく変わりましたよね。都道府県によって多少の差はありますが、基本的に一般市民はヤクザと食事をするだけで条例違反でアウトです。
進藤 飯食ってホームページに名前を乗せられるのは馬鹿げていると思いますけどね。カタギの知り合いに「辞めたいんだけどどうしたらいいだろう」と相談してるかもしれないじゃないですか。国はヤクザの離脱を支援すると言いますが、一般社会と接触する機会を完全に奪っては離脱だってできるはずがない。その違和感を感じます。
廣末 その通りです。昨年、ある会社のA社長が経営者同士の飲み会に行ったら、その中の1人が現職のヤクザ社長だったんです。A社長の主張ではその人がヤクザだと本当に知らなかったようなのですが、飲み会の事実が県に公表されると「反社との付き合いがある」という風評が立ちました。すぐに多くの会社から仕事を切られ、年商50億円規模の会社だったのですがあっという間に倒産しました。しかもその元社員が転職活動をしても、反社と関わりのあった会社の社員だ、となかなか採用してもらえなかったんです。知っていて交際していたならまだしも、知らなかっただけという「過失」でここまでする必要はあるのか、というのは疑問ですね。
進藤 福岡は特に厳しいです。私のように入れ墨があると、銭湯もダメ。関東なら町中の銭湯なら入れてくれますよ。福岡は一般人が巻き込まれる事件が多く発生していた土地柄なので致し方ないとは思いますが……。
「子供をヤクザに預ける親もいた」時代
廣末 最近ニュースを見ていて思うのは、かつてはヤクザになっていたような居場所のない若者の一部が、今は新宿のトー横などでたむろしているのだと思います。いつの時代も家庭や地域になじめない層はいて、その子たちがトー横キッズになるのと暴力団員になるのと、どちらがマシなのだろうと思うんです。
進藤 僕はヤクザになって万引きをやめました。「人様のものを奪うな」と兄貴分から強く言われましてね。実際はヤクザの中にプロフェッショナルな窃盗集団もいたりして、ただの“見栄"だった可能性もありますが、当時の僕は納得しました。家庭内暴力がすごかった親がヤクザに子供を預けたケースもありました。