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廣末 私自身、子供の頃に福岡のヤクザからおこづかいをもらったりして、悪い印象がなかったのもヤクザ研究の道に入ったきっかけの1つかもしれません。警察はこの30年、ヤクザをひたすら懲らしめる方向に進んできました。それを批判するつもりはありませんが、これからは辞めたいという人を支える体制を拡充する方向にも力を入れるべきです。進藤先生は、ヤクザを辞めてどれくらいになるんですか?

進藤 最後の刑務所を出て今年でちょうど20年、やっと成人したばかりです(笑)。割り勘文化にもやっと慣れてきました。ヤクザは目上や金のある人間がすべておごるので、決して割り勘はしませんからね。

お祭りの屋台を見て回る廣末登氏

廣末 ヤクザ離脱者の更生支援は私たちの共通の大きなテーマです。私は更生保護就労支援事業所の所長だった頃、協力雇用主(元受刑者の雇用に理解を示す企業)を探す仕事をしていたこともあります。しかしやはり元暴力団員を採用してくれる企業は少ない。進藤さんも大変だったのではないですか?

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「入れ墨を見せてすごんでやろうか」という考えが頭をよぎる

進藤 刑務所を出てカタギに戻ったばかりの頃、建設現場の仕事をしている時に年下の上司に呼び捨てで指示されることにイライラしていた時期はありました。牧師になるという夢があったのでなんとか我慢できましたが、そういう時に元ヤクザは「入れ墨を見せてすごんでやろうか。なんで俺がこんなやつになめられなきゃいけないんだ」という考えが頭をよぎるんです。ただ20年間一般社会になんとかなじもうとしてきた身としては、ヤクザ社会はやはりハリボテだったなと思います。弱いのに強がる、見栄をはる。お金をもっていなくても羽振りがいいふりをする。私自身も女や金など目先の物しか見えていませんでした。一般社会で生きる方がよっぽど大変で、かつての私は覚醒剤に逃げていただけなんだとよく分かりました。

進藤氏

廣末 先生は牧師という目標に向かって進まれましたが、実際にはヤクザを辞めても更生する気がなく、犯罪に手を染め続ける人間もいます。そうすると社会は「元暴力団員」を危険視する状態が変わらない。

進藤 ヤクザ時代に「人様のものを奪うな、叩き(強盗)だけはするな」と言っていた人が叩きで逮捕されたり、車の窃盗団になったり、ヤクザを辞めても男気のかけらもない事件を起こしつづけている人もたくさんいます。でも、本当に立ち直ろうとして怖い思いをして組から逃げてきて、一生懸命働こうとしている人間がいるのも事実なんです。私の教会で住み込みで働いていたヤクザ時代の先輩も、後輩の私に頭を下げて一生懸命努力していました。

 銀行口座を持てない、携帯の契約ができない、家を借りられない、お金もない……。本当に更生したくても、どうしようもなくなって生きるために再び犯罪に手を染めてしまう人が出る前に、何度裏切られても彼らを助けたいんです。