ふて腐れた浩二は、2階の自室に戻り、気を紛らわすために、昼間買ったウイスキーをラッパ飲みしていたところ、そこにまた父親が現れた。浩二は言う。
「父親は突然、部屋の扉を開けて『酒なんか飲んで何事だ。お前の仕事は勉強することで、酒を飲むことじゃないぞ。お父さんのように偉くなってから酒を飲め。この馬鹿者が』と怒鳴って右脇腹を蹴られました。そして、『明日、家を出ていけ』と言われ、そのとき、両親は私を邪魔者扱いしていると思いました。それならいっそ、両親を殺してしまおうと殺意を抱きました」
浩二はそこで、以前読んだ推理小説で、鉄棒を使って被害者を殺害する場面があったことを思い出した。
「僕は押し入れにあった金属バットで殺そうと決意しました。兄はまだ帰宅していなかったので、しばらく待っていましたが、もう帰ってこないだろうと思い、午前2時半頃、金属バットを脇に抱え、トイレに行くふりをして、1階に下りました。指紋がついてはまずいと思い、洗面所にあったゴム手袋をはめ、父親の寝室の前に行くと、なかからイビキが聞こえました。そこで布団の前に行き、金属バットで額のあたりを1回強打すると、唸(うな)るような呻(うめ)き声を上げたので、頭に掛布団をかけて、何度か強打しましたが、それだと効き目がなかったので、掛布団を取り除き、スイカ割りのように何度か顔と頭をめった打ちにしました」
「お前、どういう気持ちでいるんだ」
父親は抵抗することなく絶命した。浩二は続いて、奥の8畳間にいる母親のもとへと向かう。
「母親も父親と同じで、金属バットでめった打ちにすると、すぐに死にました。ただ、このままでは僕が疑われるのは間違いないと思い、強盗が入ったように見せかけるため、納戸の貴金属類を盗りました。次に血のついたバットとゴム手袋を風呂場で洗い、もう1度両親の寝室を覗いて、死んでいるのを確かめてから2階に上がり、バットや血のついた衣類を天袋やタンスの裏に隠し、ほっとしてベッドに入りました」
浩二はこれらのことを淡々と説明した。彼は現場での実況見分でも平然とした姿を見せており、後日、兄と面会して「お前、どういう気持ちでいるんだ。死んでしまえ」となじられた際も、ただ黙ったまま無表情で通し、まるで能面のように、感情を表に出すことは一切なかった。
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。