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「このままだと50歳で寝たきりですよ」パプワくん作者・柴田亜美(55)が体験した“地獄の漫画家生活”――2022年BEST5

柴田亜美の過去/現在/未来 #1

2023/01/01
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編集が休むようになって気づいた「時代の変化」

――そういったモーレツ時代が変わってきたな、と感じた瞬間はありますか?

柴田 担当編集の働き方に、時代の変化を感じますね。みんな土曜日は休んでいて、電話もしない。連絡手段も電話からLINEに。最近では打ち合わせもリモートに変わりました。

 昔が異常だったんでしょうね。かつて編集者は四六時中、作家にへばりついているのがステータスだった時代がありました。

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――部屋の隅で、原稿を描き終わるまで待っているみたいな。

柴田 そう! なぜか作家のほうが「編集が待つための部屋」を用意しなきゃいけない時代があったんです。でも女性漫画家も年々増えてきたので、いつの間にかそういった文化は消滅しましたね。

 私がバリバリ描いていた時代は、本当に厳しかったんです。時間がなくて、移動中の新幹線や飛行機の中で描くのも当たり前。最終的に、出版社が会社のそばのホテルに缶詰部屋を用意してくれたり。私は絶対にホテルで描くのは嫌だったから回避したけど、担当編集も原稿を落とせば、編集長からひどく怒られる時代ですからね。みんなとにかく必死でした。

 

――多いときで、担当編集は何人いたんですか?

柴田 月刊ジャンプ、なかよし、週刊スピリッツ、週刊ファミ通、月刊少年ガンガン、アニメージュ、月刊ファミ通ブロス、Amieだから……7〜8人くらい? みんな地縛霊のように「先生、描いてください」「描いてくださ〜い」って、毎日“取り立て”を受けていましたね(笑)。

 その頃は、本当に健康よりも仕事でした。ある日、歌舞伎町で酔っ払って、10cmのピンヒールを履いているときに転んじゃったことがあるんです。骨折や捻挫もしていなかったし、描かなきゃいけない原稿もあったから、そのまま歩いて帰宅しました。

 そしたら日を追うごとに、どんどん足の色がおかしくなって。上等なメロンの筋みたいなものが入り始めたんです。慌てて病院に行ったら、「即手術が必要だ」と言われて。

 でも、まだ原稿が残っていたので一度病院を抜け出して、それを描き上げてから病院に戻りました。そしたら院長先生から「あともう1日手術が遅れていたら脚切断だったよ!」とカンカンに怒られました。そりゃそうですよね。いろんな意味で、今だったらあり得ないですよね。それくらい原稿に必死でした。

柴田亜美
長崎県出身。『南国少年パプワくん』『ジバクくん』『PAPUWA』などの作品がTVアニメ化され、これまでの著書は累計発行部数2,000万部を超えている。2021年には「KOMIYAMA TOKYO」から画家としてデビューした。

写真=深野未季/文藝春秋 
 

2022年「マンガ家部門」BEST5 結果一覧

1位:「夫の浮気を疑う母親が、子どもに会社まで見に行かせて…」家事や家族の世話に追われる、ヤングケアラーの“壮絶な実態”
https://bunshun.jp/articles/-/59615

2位:「どんなに好きな相手でも、5年くらいで恋愛的な刺激がなくなる」 “惰性で会社に行っていた”漫画家が“ダメ恋愛”から抜け出せない人に伝えたいこと
https://bunshun.jp/articles/-/59614

3位:「このままだと50歳で寝たきりですよ」パプワくん作者・柴田亜美(55)が体験した“地獄の漫画家生活”
https://bunshun.jp/articles/-/59613

4位:離婚して車中泊に…53歳マンガ家が「自由であるけど不自由」な生活を続ける理由とは
https://bunshun.jp/articles/-/59612

5位:「元妻に子どもを誘拐された」知人の言葉に困惑…取材してわかった、“子に会えない親たち”の共通点
https://bunshun.jp/articles/-/59611

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。

「このままだと50歳で寝たきりですよ」パプワくん作者・柴田亜美(55)が体験した“地獄の漫画家生活”――2022年BEST5

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