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「ボコボコにされました」「ロジックが通用しない」生物ハンターが南米で出会った《最凶生物》の正体

生物ハンター・平坂寛インタビュー #2

2022/12/31

genre : ライフ

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平坂 いろんな生き物に会いたいんだけど、子供なので、できることが限られる。そんな時、本や図鑑を開くと、外国の珍しい虫や生き物がたくさんいました。いいなあ、いつかこういう生き物が生きているところに行きたいなあ、って夢を膨らませる少年時代でした。

 一方で、虫や生き物が好きであることは、中学生・高校生時代は隠していました。僕は1985年生まれなんですが、思春期の1990年代後半~2000年代前半頃って、いわゆる「オタク的な人たち」に風当たりが強い時代。そういうものが好きだっていうのは、ネガティブな要素なんじゃないか、変人扱いされるんじゃないかと勝手に思って、フツーの男子の振りをしていました。

「生き物」以外の道は考えられなかった

――でも、虫や生き物への気持ちは変わらなかった。進路を決める時に迷いはなく?

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平坂 高校卒業時、生き物関連以外の道は考えられませんでした。留学は言葉の壁もあるし、沖縄が現実的だと思って、琉球大学へ。実際に生物に「噛まれてみる」「刺されてみる」という体験型になったのは、その頃からです。

 子供の頃からカメムシの臭いをかぎ比べる、といったことはしていたんですけど、昔は、痛いのはイヤでした(笑)。でも沖縄には毒のある生き物が結構いて、事故でいろいろ刺されるうちに、痛みというのは、危険信号なんだと理解できていく。そうか、痛みの“向こう側”にさえ行かなければいい。じゃあ、問題ない範囲で刺されてみるかって、どんどん過激な方向に……(笑)。

――例えば今、「これはヤバい」ってわかっていることも、先人の経験があるからですよね。

平坂 魚だと、まだ誰も刺されたことがないヤツが結構いるんです。例えば珍しい魚が釣れたとして、図鑑を見ても、毒があるなんて書いていない。あるいは、毒を持っていることはわかっていても、「噛まれると痛い」程度の情報しかなかったりする。

 ミツバチもスズメバチもムカデもサソリも、全部「刺されると痛い」。どう痛いのか、どういった痛みなのかが全然わからない。「それ、一緒にしちゃっていいの!?」と以前から疑問で、じゃあちゃんと検証するかって体験し始めた部分はあります。

 あと、完全に虫側に贔屓目な意見なんですけど、たいして危なくもない虫が、ちょっと毒をもっただけでこき下ろされる風潮があります。決して近づいてはならない、見つけたら潰せみたいな話にもなったりするので、「そんなことないよなあ」って、個人的には弁解したくなっちゃう(笑)。

――虫側の言い分を(笑)。

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