「家に帰って急いで服を脱いだら、ブツブツブツブツ!って、真っ赤な湿疹が一面に……。かゆみは3、4日続いて、炎症は10日間以上残りましたね」

 ダニやハチ、サソリなど世界各国のさまざまな生き物に刺されてきた生物ハンターの平坂寛(ひらさか・ひろし)さんインタビュー。これまで出会った中で、特に「ヤバかった生き物BEST3」を教えてもらった。(全2回の1回目/後編を読む)

巨大サソリやハブなどこれまで様々な危険生物と向き合った生物ハンターの平坂氏。そんな彼に「ヤバい生き物」BEST3を聞いてみた(画像:本人提供)

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ヤバい生き物BEST3――まずは…

――平坂さんは、今までどんな「ヤバい生き物」と出会いましたか?

平坂寛(以下、平坂) キャンプとかでよく遭遇するヤツで、「ヌカカ」っていうのがいるんです。糠の粒ぐらい小さい蚊という意味で、袖の隙間や肌着の中にも入ってくるから、「スケベ虫」ともいう。これが、めちゃくちゃタチが悪い。

 姿が見えないうえに、刺されたら、時間差でかゆみと炎症が起こるんです。それも、よくいるヤブ蚊とは比べ物にならないぐらい炎症が酷くて、とにかくかゆい。さらに、患部は真っ赤になって、長期間残ります。痛いのは割と耐えられるんですけど、かゆいのは本当に耐えられない。

 最初に刺されたのは大学生の頃でした。沖縄の田んぼで魚の観察をしていたら、なんだか体がかゆい。何かに刺されたんだろうな、程度に思っていたら、帰宅する道中でどんどんかゆみが酷くなって、家に帰って急いで服を脱いだら、ブツブツブツブツ!って、真っ赤な湿疹が一面に……。かゆみは3、4日続いて、炎症は10日間以上残りましたね。

――ヤバい虫というと、巨大グモやサソリなんかをイメージしそうですが、小さい蚊というのは意外でした。

平坂 実は虫のヤバさって、小ささなんですよ。小さい虫は一匹あたりの毒性は軽いですが、群れる習性があります。ヌカカは、大量発生して、大群で襲ってくる代表格ですね。

 森林とか湿原とか、基本的には緑が多い場所によくいるんですが、海岸にもいる。いろんなところにいて、全く気づかないうちに刺されている。突然かゆみが襲ってくるから、最初は自分の体に何が起きているのかわからず、パニックになります。

 でも、こっちが気づかないうちに何かしらヤバい症状が出ているっていうのは、結構リスペクトすべき点だなと。

――お前ら、やるなァ!と(笑)。

巨大イグアナと戯れる平坂氏(画像:本人提供)

平坂 ダニとかヌカカとかって、大昔は、その正体が全くわかってなかったと思うんですよ。顕微鏡もないし、夜道を歩くにしても、明るい街灯なんてなくて、せいぜいランタンとか提灯。何にも遭遇したおぼえがないのに、家に帰ったら何故か皮膚が疫病みたいになっていて、死ぬほどかゆい。

 そう考えると、もしかしたら昔の人は、ダニとかヌカカを、妖怪のように思ってたんじゃないかな。森や水の周りはろくでもないことがある、それは妖怪がいるからだ、みたいな。妖怪にまつわるものがたりって、そういう、自然界のちっちゃいヤバい生き物から生まれるんじゃないかなとか想像すると、楽しくなってくるんです。