「すごくベタですけど、いちばん危険な生き物は……」

 世界をめぐる生物ハンターの平坂寛(ひらさか・ひろし)さんインタビュー第2弾。これまで多くの有毒動物と対峙した彼だが、37年間の人生で最も恐怖を感じたのは意外な相手だった……。知恵や経験がまるで通用しない“最凶生物”とはいったい?(全2回の2回目/前編を読む)

生物ハンターの平坂寛氏が37年の人生の中で出会った「最もヤバい生物」とは?(画像:本人提供)

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無類の虫好きなのに「アレ」だけはダメだった

――小さい頃から虫好きだったとのこと。家のまわりが虫にあふれる環境だったのでしょうか?

平坂 物心ついた時には、虫好きでした。でも、僕が生まれ育った長崎が、特に虫だらけだったというわけではないんです。日常生活で遭遇するのは、アパートのベランダや玄関の蛍光灯に集まる蛾やカナブンくらい。

 ただ、実家が古本屋で、本は潤沢に読める環境でした。親がよく図鑑や虫の絵本をお土産に持って来てくれたので、身近にいる虫を図鑑で調べるのが僕の“遊び”でした。子供の“好き”を否定する大人がまわりにいなかったのは、とても幸いなことだったのですが、家にいるゴキブリだけは、両親も学校の先生も猛烈に嫌がる姿を見てしまったせいか、今もダメですね……。

――なんと。まさか平坂さんに、ダメな虫がいるとは!

平坂 ゴキブリ自体は大好きで、外国にゴキブリの取材に行ったりするほど。でも、クロゴキブリや、ワモンゴキブリのような家の中にいるゴキブリだけはダメなんです。自分でも不思議なんですけど、遭遇すると「うわあああ!」って(笑)。

 でも、実は僕、3歳ぐらいまでは家にゴキブリが出ると、手で捕まえようとしていたそうです。虫好きに理解のある親でも、それだけはやめさせるのに必死で、「触ったら病気になる」「ばっちい」などと言いまくっていたらしい。それで、僕の脳に「あれは絶対近づいちゃいけないヤツ」と強烈に刷り込まれているんでしょうね。

 もう一度、あいつらを素手で捕まえられるぐらいになりたい。なんとか克服しようと頑張ってるんですけど、まだ無理ですね(笑)。

思春期にはひた隠しにした“趣味”

平坂 小学校高学年ぐらいになると、少し行動範囲が広がって、近くの山にクワガタを捕まえに行くのが楽しみでした。冬は虫がいなくなるので、魚釣りを覚えて。

――虫がいない季節の楽しみとして、魚にも興味をもったんですね。