ヤバい生き物その2「スイミングスコーピオン」
平坂 2つ目のヤバい虫は、東南アジアとか中国にいる「スイミングスコーピオン」というサソリです。ほとんど毒がなくて、日本の「マダラサソリ」と見た目がそっくり。マダラサソリは、刺されてみたことがあるんですけど、たいして痛くもないし、毒もほとんどない。一瞬チクッとするけど、30分以内には消えているレベルです。
「スイミングスコーピオン」はインドネシアで見つけました。最初マダラサソリがいるな~と思って、軽い気持ちでつまんだら早速刺されたんですけど、痛みが尋常じゃない。スズメバチに刺されたぐらい痛くて、叫び声をあげたほどでした。
でもその時は、痛みだけなら我慢できると思って、そのまま食事に行ったんです。そうしたら、氷水が入ったグラスを持っているのに、熱く感じるんですよ! 温度感覚が逆転したんです。
刺されたのは右手だったんですけど、右手で冷たいものを触ろうとすると、熱くて触れられない。逆にアツアツのスープ皿を触ると、冷たくて気持ちいいんです。飲んでみると、熱いものはちゃんと熱いし、冷たいものは冷たい。
おそらく神経に作用するタイプの毒で、温度感覚に異常が起こる。日本でも沖縄にシガテラ毒っていう毒をもつ魚がいます。それに刺されると、冷たいものに触れた時に痛くてたまらず、ドライアイスを触っているような感覚になる。スイミングスコーピオンの毒も、それに近い影響が出る毒だったんだと思います。
お風呂に入っても、右手だけ冷たいのには驚きましたね。結局、温度感覚に異変があっただけで、一晩で治りましたが。ほかのサソリと勘違いして刺されたので、想定外という意味も含めて、ヤバいくらい面白かったですね。
――サソリのなかでも、スイミングスコーピオンのヤバいポイントはどこでしょう。
平坂 まず、サソリは文句なしにビジュアルがかっこいい。そして魅力を感じるのは、やっぱり毒があるからなんです。毒を振りかざすためだけのしっぽがついていて、その先端には毒針が武器として装着されている。
サソリって、俗にしっぽが太いほどヤバいって言われているんですが、おそらく、毒が強いなら、それを扱える毒針をうまく振り回さなきゃいけない。だから、筋肉がたっぷりついた太いしっぽを備える。逆に、毒が弱かったら、使う意味があまりないから、そこは申し訳程度にして、かわりにハサミを大きくするとか、そういう進化の選択があるわけです。
スイミングスコーピオンは、しっぽがすごく太くて、本当にかっこいい。アフリカとか中東の砂漠に行くと、もっとヤバいのがいますが、それは、ふざけてんのかっていうぐらいしっぽが太い。それだけ彼らは過酷な環境で生きているということだと思うんです。
――生きるために進化してきた、という。