2022年(1月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。社会部門の第1位は、こちら!(初公開日 2022年8月15日)。

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 太平洋戦争終結から77年目の夏を迎えた日本。戦争体験者が年々減少し、当時の記憶・記録をいかに継承していくのかは、いまや社会的な課題だ。

 そんななか、戦前~戦後の貴重な白黒写真約350枚を、AI技術と人の手によりカラー化し、まとめた『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(光文社新書)が幅広い世代から好評を博し、6万部にのぼる売上を記録している。

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マーシャル諸島の日本兵たち

「戦争体験者が0人になる未来が見えてきているなかで、戦争体験をどう伝えていけばよいのかという課題意識がありました。とはいえ、私と同世代の20~30代の人たちからすれば、戦争ははるか昔に終わったことなので、リアリティを持って考えるのはなかなか難しいんですよね」(担当編集者の髙橋恒星さん)

「そう考えていた際に、乗り鉄であり、撮り鉄でもあったJ・ウォーリー・ヒギンズ氏が、カラーフィルムで収めていた日本の風景写真をまとめた『秘蔵カラー写真で味わう60年前の東京・日本』(光文社新書)のような新書がつくれないかと思ったんです。

 その折に、本書の著者である渡邉英徳先生と庭田杏珠さんによる「記憶の解凍」というカラー化の活動を知り、これだ!と直感しました。

 戦前・戦後の生活風景、戦地のリアルな光景をカラーの写真でまとめられれば、『写真に写っている人は実際にこんな土地でこんな風に暮らしていたんだ』というところから、戦争の諸問題について考えてもらえるのではないか、という発想でしたね」(同前)

 
日系人強制収容所で体操をする少女 Ansel Adams撮影

AIだけでなく人力の採色も行ったワケ

 企画時の想定通り、発売後は「カラー写真になったことで“現在”と地続きに“当時”を感じられる」と話題を呼んだ。しかし、保管状態も千差万別な白黒写真をカラー化する作業は一筋縄ではいかなかった。

「ものによってピンキリではあるんですが、『パッと見は良いんだけど、細かい部分の色の塗られ方がおかしいな』とか『全体の色調がなんだか変だな』といったものが出てくることがよくありました。なので、リアルに仕上げるために人間の手作業が必要だったんです。

 担当編集としては『AI“が”カラー化した』という方が注目が集まりやすいだろうという想定もありましたが、話題性を優先させて、正しい色ではない写真をそのまま使ってしまうと、誤った記録・記憶を固定化させることになりかねません。なので、タイトルは『AI“と”カラー化した~~』としたんです。

 そのため、ほとんどの写真は、写真を提供してくださった方と著者の間で何度も話し合って調整しています。“歴史を語り継ぐ”という意味でも、それは必要不可欠な作業でした」(同前)

 高いクオリティでカラー化された、戦前〜戦後の貴重写真が多数収録されている同書。発売後は売上部数以上に数多くの反響が寄せられ続けているという。

2020年7月発売。現在6刷、6万部(電子含む)

2022年「社会部門」BEST5 結果一覧

1位:〈写真多数〉あばら骨がクッキリ浮き出た日本兵、強制収容所で体操する少女…カラー化した写真で振り返る“戦時下のリアル”
https://bunshun.jp/articles/-/59710

2位:「じゃんけんで勝った方がお客さんの前を洗うんやで」未成年舞妓に『お風呂洗い』『旦那さん制度』『深夜の酒席』を強いてきた“花街の論理”《弁護士見解「労働契約が必要」》
https://bunshun.jp/articles/-/59709

3位:式の日はカップルで尻を叩き合い、初夜は女性上位で避妊は禁止…統一教会「合同結婚式」の“性とカネ”
https://bunshun.jp/articles/-/59708

4位:〈元小学生ギャル〉「入学から半年経っても教室に入れない」「髪色の問題で遠足も辞退…」中学生ギャルの父親(30)が、学校側の対応に思うこと
https://bunshun.jp/articles/-/59707

5位:「旦那に夜の営みを打診したことはあるけど…」20年以上セックスレスだった53歳主婦が女性用風俗を利用した“切実な理由”
https://bunshun.jp/articles/-/59706

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。次のページでぜひご覧ください。