メディア、そして社会の矛盾と「人間の歪(いびつ)さ」を生々しく描き、次の回の予測がまったくつかない展開で視聴者を虜にしている『エルピス ―希望、あるいは災い―』(カンテレ/フジテレビ)が、今夜いよいよ最終回をむかえる。その直前に、本稿では登場人物のこれまでの軌跡と、この作品が何を描いてきたのかについて、振り返ってみたい。

 12月19日に放送された第9話のラストでは、局側の“忖度”により関連子会社に飛ばされた『フライデーボンボン』の元プロデューサー・村井(岡部たかし)が、「ニュース8」の収録スタジオに乱入した。腐敗した政治とズブズブの関係にある大洋テレビの報道部にブチギレたのだ。

©カンテレ/フジテレビ

「ざっけんな! ざっけんなよてめぇら! どいつもこいつも正義面しやがってよ! 何が報道だ! この腐れいんちきどもが! 高尚ぶってんじゃねぇぞ!」

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 怒りを爆発させ、パイプ椅子でセットの壁を破壊する村井が、浅川(長澤まさみ)に、そして我々視聴者に問いかけてくる。「おまえは、それでいいのか?」と。

「村井の見え方の変化」の意図は

 第1話で、のっけから浅川や岸本(眞栄田郷敦)にセクハラ・パワハラ三昧の罵詈雑言を吐き、いかにも「面倒くさい上司」として登場した村井が、いまや最高にかっこいい“ヒーロー”に見える。

 この、「村井の見え方の変化」は、いわゆる「キャラ変」とか「デレた」とか、そんな話ではない。もともと持っていながら、これまで見えていなかった「面」が明るみに出たということだろう。脚本をつとめる渡辺あやは、本作でも、他のどの作品でも必ず、「人間の多面性」に重きを置いてきた作家だ。