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 中学の同級生の「カイくん」へのいじめに見て見ぬふりをして、彼を自殺に追いやってしまったという岸本の過去。トラウマであり十字架でもあるそれに向き合い、背負いながら生きることを決意する岸本の「成長」も描かれる。岸本が胸襟を開き、「カイくん」への思いを打ち明けることで、取材対象者が心を開くという場面もあった。8話では、連続殺人事件の被害者・中村優香の親友、高岡ひかる(堰沢結愛)が。9話では、事件の鍵を握る大門副総理(山路和弘)の娘婿で、内部告発を試みる秘書の亨(迫田孝也)が。

 村井の“腐れ縁”で、『週刊潮流』の編集長・佐伯(マキタスポーツ)は岸本の素質を見抜き、記者としてスカウトする。「君には“それ”がある」「たぶん一生“それ”を捨てることもできない。死ぬまで奴隷なんだよ、“それ”の」――。“それ”とはおそらく、「真実を知りたい」という強い衝動と欲求のことだろう。

 このドラマが描き、また、現実社会と地続きでもある、“腐れいんちき”な世の中にあって、「ジャーナリスト・岸本拓朗」の誕生は、数少ない「希望」だ。岸本の存在は、渡辺あやが若い世代に送るエール、あるいは「祈り」のようにも思えてくる。

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たった一度だけ出てきた、斉藤の「関西弁」

 メイン・キャラクター3人の中で唯一、いまだに手の内を明かしていないのが斎藤正一だ。斎藤の存在は浅川・岸本にとって「希望」なのか「災い」なのか。最終回では何らかのかたちで明かされるのではないだろうか。第2話で、浅川のマンションのインターホンの前で斎藤が逡巡した後、たった一度だけ出てきた「何なんや」という関西弁。これが、最終回で斎藤の「本音」が明かされるときに効いてくるのかどうかも、気になるところだ。

鈴木亮平 ©文藝春秋

 これまで、真実に迫ろうとする浅川・岸本の前に、大門の側近として、体制側の人間として立ちはだかってきた斎藤。しかし、思い返せば第1話で2人が斎藤に相談を持ちかけたとき、「まずは番組内で特集映像を流す」という「最初の一歩」のヒントを与えたのも他ならぬ斎藤だった。ものごとは何が幸いし、何が災いするのかわからない。

 村井が亨を岸本に引き合わせ、真相解明に大きく前進するかと思いきや、それが元で亨が殺されてしまったことも、「幸いと災いの表裏一体」を思わせる。

脚本家・渡辺あやが語っていた「最終回のヒント」

 さて、このドラマの最終回は、どんな結末を迎えるのだろうか。先述のインタビュー(※)の中で渡辺あやはこう語っている。