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《その「不都合」をどうするのかということを、その都度考えて、そして考え続けていくことが、大事なんだと思います。私にできるのはせいぜい、問題がどういうことなのかということを、解きほぐしてお伝えするまで》

《私たちはつい、起こっている物事を「善」とか「悪」とか、解釈しやすいように分けたがるんですけれど、本当はどちらとも言えないんじゃないかなということは、この作品を書きながら、ずっと感じていたことです。この、「どちらであるか、ひと言では言いきれないこと」をみんなで共有することが、大事なのではないかなと》

 おそらく、「これが正義である/悪である」という、わかりやすい答えは用意されていない。いつまでたっても「世界はましに」ならないし、「めでたしめでたし」では終わらないだろう。

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渡辺あや ©文藝春秋

番組のキービジュアルの「色」が暗示するもの

 渡辺あやは複数のインタビューで繰り返し、二元論の危険性について言及している。そして、世界の分断や争いは必ずと言っていいほど、極端な「0/100理論」から起こっている。浅川・岸本・斎藤が膨大な資料の前に佇む、番組キービジュアルのトーンは「グレー」だ。「何事も白と黒に分けたがる自分を、まず疑え」「自分が“正義”だと信じて疑わないそれは、はたして本当に正義なのか」。そんなメッセージが、このドラマには込められている気がしてならない。

 ともあれ、岸本や浅川と同じように、作品を通じて「真実」を尋ね続ける“求道者”たる渡辺あやと、このドラマを絶対に諦めなかった制作統括の佐野亜裕美プロデューサーが、「テレビに何ができるのか」を問い続け、とてつもない「当事者感」を持って作り上げた本作。構想から6年もの歳月を費やして放送にこぎ着けた『エルピス―希望、あるいは災い―』が、視聴者にとって唯一無二の作品となることは、間違いなさそうだ。そして物語の結びとともに、「真実」の追求は、私たちに委ねられるのだろう。

※「最終議論で『断固セクハラは残すから』と…」『エルピス』脚本家・渡辺あやが語る、“不都合な欲望”を描くわけ(https://bunshun.jp/articles/-/58410

※「この役は長澤まさみさんしか考えられないので」『エルピス』脚本家・渡辺あやが明かした、キャスティングの裏側(https://bunshun.jp/articles/-/58411